「虫歯を削った後に入れる詰め物は金属よりセラミックの方がいいと聞いたことがあるよ」「どんなメリットがあるのかな。治療の流れや費用も知りたい」
今回は、こんな興味や疑問がある人に向けて、医療ライターのショウブ(@freemediwriter)がかかりつけの歯科医院でセラミックを入れた模様をレポートします。
セラミックは健康保険が適用されない自費の素材なので、保険適用の銀歯やプラスチックに比べて費用がかなり高いのですが、見た目は良く、性能も良いそうです。
セラミックのメリット・デメリットを書きつつ、現物の写真も載せるので参考にしてみてください。
目次
セラミック治療を受けた経緯
- 右上の歯に虫歯らしきものが見つかる
- 詰め物を外すと虫歯が。削る
- 銀歯にするかセラミックにするか検討し、後者に
「歯と歯の間に黒っぽいものが見えますね」。2021年3月30日、かかりつけの歯科医院で行っている定期クリーニングの際、担当の歯科衛生士がこう話しました。


わたしから見て右上の4番と5番の歯の間が黒ずんでいるので、歯に虫歯ができている可能性があるそうです。
上の写真の金属を詰めている歯が4番で、その右隣が5番。確かに2つの歯の間が黒くなっていますね。
4番の歯は金属の縁に沿ってプラスチックを詰めているのですが、この中で虫歯が起こっているかもしれないそうです。
4月15日にプラスチックを外してみると、やはり中に虫歯がありました。


プラスチックを詰めていた部分に黒い塊があります。虫歯です。
歯科医師によると、歯と詰め物の間から細菌が入り込み、中で増殖してしまったのではないかとのこと。
「歯と詰め物・被せ物の間から細菌が入り、知らず知らずのうちに虫歯が進んでしまう」ことは、過去に複数の歯科医師が取材で話していました。
歯の内部で虫歯が進んでしまうため、進行しないと気付きにくいといいます。
わたしの場合もそうで、この日に虫歯を削った歯科医師は、「中でけっこう進んでいた。神経に近いところまで来ていた」。
歯科衛生士が気付くのが遅ければ、神経を取らなくてはなりませんでした。神経を取ると歯の寿命が縮むそうなので、そうならずに済んだのは定期的にクリーニングを受けていたおかげかもしれません。
この日にセラミックの特徴を歯科医師に聞きました。次回までに銀歯にするかセラミックにするか検討してくださいとのこと。
セラミックの長所と短所
かかりつけの歯科医師と過去に取材した歯科医師が話していたセラミックのメリット・デメリットは下の通り。
メリット
- 光沢があり、見た目が天然の歯に近い
- 時間が経っても変色しづらい
- 表面が滑らかで汚れが付きにくい
- 金属アレルギーのリスクがない
- 温度変化の影響を受けづらい
- 技術の高い歯科技工士が作ってくれる可能性が高い
デメリット
- 金属より割れやすい
- 費用が高い
セラミックは茶碗などに使われる陶材の一種で、光沢があって天然の歯と見た目が近く、表面が滑らかなので汚れが付きづらいといいます。
プラスチックに比べて時間が経っても変色しづらく、また銀歯で起こり得る金属アレルギーの心配がないことも長所だそう。
さらに、口腔内の温度変化の影響を受けづらいことも特長だといいます。
熱い物を食べると口の中は一時的に熱くなり、冷たい物を食べると口の中も冷たくなりますよね。
物質は熱が加わると膨張し、冷えると縮む性質がありますが、金属は熱の影響を受けやすく、口腔内の温度変化によって膨らんだり縮んだりしやすいそう。
形状変化を繰り返すと、やがて歯と詰め物の間にすき間ができてしまいます。つまり、時間が経つほど虫歯ができる可能性は高まっていくというのです。
こういったリスクはセラミックの方が小さいといいます。
保険の詰め物は作り手の技術が低い?
また、セラミックは腕の立つ歯科技工士が作ってくれる可能性が高く、結果、歯と詰め物の適合や噛み合わせが良いなど、「総合的に質の高いものができやすい」そう。
「詰め物や被せ物は歯科医師ではなく、歯科技工所に在籍する歯科技工士が作ります。
その際、どの依頼をどの人が担当するか技工所内で検討されるわけですが、一般的に保険内の詰め物・被せ物を技術の高い人が担当する可能性は低く、若手などに回されることが多いです。
『金額の高い依頼ほど良い人をあてがって良いものを作ろう』というのは歯科業界でも同じなんですね。
これはかかりつけの歯科医師から聞いたことで目からウロコでしたが、資本主義社会を考えれば自然なことかもしれません。
こんなふうにセラミックには複数のメリットがある一方、短所としては金属よりも割れやすいといいます。
茶碗が衝撃にさほど強くはなく、欠けてしまうことがあることを考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。
ただこれは長所にもなり得るそうで、「歯の中の異変に早く気付きやすくなる」(かかりつけの歯科医師)。
銀歯は割れづらいので、中で虫歯などの問題が起こっていても気付きにくいそう。実際、銀歯を外したときに中に虫歯ができていることがあるそうです。
反対に、歯の中の問題がセラミックに影響する場合、それが破折などの現象として現れることがあるといいます。
セラミック治療の流れ
- 虫歯を削る
- 歯型を取る
- 歯科技工士が歯型に合わせてセラミックを作る
- 噛み合わせを調整してセラミックを入れる
セラミック治療の流れは上の通り。
わたしの場合は4月15日に虫歯を削ってその部分を保護するために仮蓋(かりぶた)をし、4月26日に仮蓋を外してセラミックの詰め物に合うよう歯を少し削り、型取りを行いました。
取った歯型は3種類で、上の歯全体、上の歯の詰め物が入る部分、下の歯型です。その後、噛み合わせの検査も行いました(詳細はわかりませんが、歯型取りと似たような動きが口の中でされていました)。
合わせて、セラミックの色を決めました。歯科衛生士が色見本を見せてくれて、どれが自分の歯の色に近いかアドバイスしてくれました。
セラミック治療全体の中で最も診療時間が長かったのがこの日で、1時間ほどかかりました。
この後、歯科医院側では提携する歯科技工所に歯型を送り、歯科技工士がセラミックの詰め物を作製。
5月11日、できあがったセラミックを入れました。


入れる前に撮らせてもらったセラミック。
確かに光沢と透明感があり、見た目に美しい印象を受けました。プラスチックはこれよりも白く濁っているような気がします。
セラミックを入れるときは歯に風を当てる必要がありますが、わたしの場合、染みたので麻酔をしてもらうことに。
噛み合わせを整えるために下の歯をごく少しだけ削り(1ミリもないとのこと)、セメントで歯とセラミックを接着しました。
最後に噛み合わせを調整。咬合紙(こうごうし)を噛み(『カチカチ、ギリギリしてください』と言われるアレですね)、紙の着色具合で歯と歯の当たり方を確かめて微調整し、終了です。


モニター越しに撮ったので画像が良くありませんが、わたしが直に写真を見たところ、やはりセラミックの見た目はきれいで、プラスチックとは違って歯との継ぎ目がわかりませんでした。
セラミックの詰め物の費用
わたしが通う歯科医院の場合、セラミックの詰め物(インレー)の治療費は型取りの段階からで5万6100円(税込み)でした。
2年間は保証制度があり、セラミックが割れたり、中で虫歯ができたりした場合などは無料で再治療を行ってくれるそうです。
セラミック治療の感想まとめ
銀歯の詰め物が5000円ほどなのに対し、セラミック治療はその10倍以上もの費用がかかります。
安くはありませんが、歯の見栄えや健康への優先順位が高かったり、経済的に少し余裕があったりする人は検討してみてもいいかもしれません。
わたしはやって良かったと思いました。「もっと歯を大事にしないとな…」と思えたからです。
【追記】他の歯にもセラミックを入れました
上の治療を行った後、右上の6番の歯もプラスチックの詰め物の下に虫歯ができていたことがわかったため、セラミックを詰めました。

上の大きい歯が6番の奥歯です。
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赤丸の中に黒い線が走っているのがわかると思います。
この歯には部分的にプラスチックを詰めているのですが、歯とプラスチックの境目に沿って黒い線が走っており、これが虫歯の一部だといいます。
前回と同じで、「歯の中で虫歯ができ、その一部が外側に現れている」そう。
同じように詰め物を外して虫歯を削り、セラミックを詰めました。

6番の歯に入れたセラミックです。

左の写真が歯を削った後のもの、右がセラミックを詰めた後のもの。

真ん中の歯にセラミックを詰めました。

赤丸の内側がセラミックの詰め物です。
「どれが歯でどれが詰め物かわかりづらいですよね」と歯科医師が話していた通り、今回もきれいに仕上がりました。
詰め物の下にできる二次虫歯には本当に注意が必要ですね。
セルフケアの状況だけではなく、
- 詰め物の素材が何か
- 詰めてからどれくらい時間が経っているか
この2点にも気を配る必要があることを肌で感じました。
【追記2】セラミック治療後に染みる可能性も
初めてセラミックを入れてから2年近く。「セラミック治療はメリットが多い」とわたしも実感していますが、ネガティブな可能性も感じたので追記します。
それは、「染みる」可能性があること。
2023年1月に左上の歯に虫歯が見つかってセラミックの詰め物を入れたのですが、固いものを食べたり、熱い飲みもの・冷たい飲みものを飲んだりするときに詰め物の部分が染みるようになりました。
複数の歯科医院のホームページやかかりつけの歯科医によると、これは「起こり得る」そう。
わたしの場合は徐々に症状が和らぎ、1カ月ほど経った時点で飲み物での違和感はなくなり、固いものを食べたときに少し染みる程度に治まりました。
しかし、かかりつけの歯科医の場合、セラミックを入れて10年ほど経つ今でも固い物を食べると「痛みがある」といいます。
複数の歯科医院のホームページによると、セラミック治療後にしみる原因は複数あり、「治療したことで一時的に神経が過敏になっている」「噛み合わせが合っていない」などを挙げています。
このあたりの可能性は治療前に歯科医師に聞いてみるとよいかもしれません。
医療ライターの庄部でした。
記事内の情報、考え、感情は書いた時点のものです。
記事の更新情報はツイッター(@freemediwriter)でお知らせします。
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