健康本レビュー

【記者レビュー】断食健康法の入門書『「空腹」こそ最強のクスリ』

「インターネット上で間欠的断食の健康効果を目にするようになってきたね」「興味はあるけど、どんなメリットがあるのかな。細胞の若返りを促すオートファジーっていう仕組みも気になる」

今回は、こんな興味関心がある人に向けて、間欠的断食の健康効果をわかりやすく解説している本『「空腹」こそ最強のクスリ』について医療ライターのショウブ(@freemediwriter)がレビューします。

  • どんな人に勧めたいか
  • この本の良い点と欠点だと思うところ
  • 序章の要約

この3点を中心に書きます。

『「空腹」こそ最強のクスリ』は間欠的断食の入門書として優れていますが、欠点だと思うところもあるのでこちらも知ってもらいたいですね。

「断食」と聞くと、その効果として減量を思い浮かべる人がいると思いますが、現在は科学的に病気や老化の予防、免疫力アップなどさまざまなメリットがあると考えられているそうです。

わたしもこの本を読んでから筆者の勧める16時間断食を習慣化していますが、メリットを実感しています。

下の記事に書きました。

【記者レポ】「16時間断食」を半年体験した感想【メリットが多い】病気の予防やアンチエイジングに有効といわれる「16時間断食」。医療ライターの庄部が実践して感想、メリット・デメリットを紹介します。...

「空腹」こそ最強のクスリの概要

『「空腹」こそ最強のクスリ』は、実用書などを発行する「アスコム」(元アスキー・コミュニケーションズ)が2019年2月に出版した本です。

著者は、糖尿病が専門の青木厚医師あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長)。

青木氏が「さまざまな」医学論文の内容や自身の診療経験、間欠的断食に取り組んだときの実感をもとにその健康効果を説明しています。

この本に書かれている「間欠的断食」とは、16時間は食べ物を食べない「16時間断食」を意味しており、これは2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隈良典氏(東京工業大学栄誉教授)の「オートファジー」研究をもとにした食事法だといいます。

オートファジーとは、古くなった細胞が飢餓状態に陥ることで新しく生まれ変わる体の仕組みを指します。

どんな人に勧めたいか

  • 間欠的断食の健康効果についてわかりやすく書かれた入門書を探している人
  • 仕事などで忙しく、読書にあまり時間を割けない人
  • すらすらと読める本を好む人

この本を2回読んで思う「どんな人に勧めたいか」は上の通り。理由を書きますね。

「空腹」こそ最強のクスリの魅力

  • 読みやすくてわかりやすい
  • 1~2時間で読める
  • 序章を読むだけであらましがわかる

『「空腹」こそ最強のクスリ』の最大の魅力は、読みやすくてわかりやすいことだと思います。

上の写真の通り文字が大きく、スペースが多用されているので視覚的に圧迫感がありません。

さらに、専門的なことが一つ一つ丁寧に説明されており、その表現も過不足がなく簡潔でわかりやすいため、医療の予備知識がなくても理解しやすいと思います。

わたしは元新聞記者のフリーライターとして、社会人になってから14年にわたって文章を書く日々を送っていますが、この本は文法も適切だと感じました。

実用書は筆者が自ら書いているケースとライターや編集者が取材して代筆しているケースがあり、この本がどちらかはわかりませんが、いずれにせよ青木氏だけでなく、本の編集に関わった人が優秀だったのだろうと想像されます。

表現が優れていると感じた部分

具体的にどの部分の表現がわかりやすく優れていると思ったか紹介しますね。

少し長いですが、読みやすいのでまとまった箇所を抜粋します。

オートファジーの説明(84、85ページ)

私たちの体は、約60兆もの細胞でできており、細胞は主に、タンパク質で作られています。

日々の生活の中で、古くなったり壊れたりしたタンパク質の多くは体外に排出されますが、排出しきれなかったものは細胞内にたまっていき、細胞を衰えさせ、さまざまな体の不調や病気の原因となります。

一方で、私たちはふだん、食べたものから栄養を摂取し、必要なタンパク質を作っています。

ところが、なんらかの原因で栄養が入ってこなくなると、体は生存するために、なんとか「体内にあるもの」でタンパク質を作ろうとします。

そこで、古くなったり壊れたりした、細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとに、新しいタンパク質を作るのです。

なお、各細胞の中には、「ミトコンドリア」という小器官が、数多く(1個の細胞に数百から数千個)存在しています。

ミトコンドリアは酸素呼吸を行っており、食べものから取り出した栄養と、呼吸によって得た酸素を使って、「ATP」(アデノシン三リン酸)という、細胞の活動に必要なエネルギーを作り出します。

新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、たくさんのエネルギーを得られ、人は若々しく、健康でいられるのですが、オートファジーによって、このミトコンドリアも新たに生まれ変わります。

糖尿病の説明(158~160ページ)

糖尿病とは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなる病気であり、「1型」と「2型」の2種類があります。

通常、血糖値は、すい臓のランゲルハンス島という部位にある「ベータ細胞」から分泌される、インスリンというホルモンによってコントロールされています。

これまで何度かお話ししてきたように、私たちが食べものから糖質を摂り、血糖値が高くなると、すい臓からインスリンが分泌されます。

血液中の糖質は、一部は脳や筋肉、内臓が働く際のエネルギーとして使われますが、余った分はインスリンの働きによって、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして、そして脂肪細胞に中性脂肪として貯蔵されます。

それによって血糖値が下がるわけです。

ところが、なんらかの原因でベータ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなることがあります。これが1型糖尿病です。

ベータ細胞が破壊されてしまう原因はよくわかっていませんが、免疫細胞が暴走し、ベータ細胞を攻撃するのではないかと考えられています。

一方、食べすぎ(特に糖質の摂りすぎ)や運動不足によって、血糖値が高い状態が続くと、全身の細胞が徐々にインスリンを受けつけなくなることがあります。

すると、なかなか血糖値が下がらなくなるため、すい臓はさらにインスリンを分泌しようと頑張りすぎてしまい、ついに疲れ果てて、インスリンを分泌できない状態になります。これが、2型糖尿病です。

28ページまで読めば大枠をつかめる

『「空腹」こそ最強のクスリ』は序章の網羅性が高い点も特長です。

28ページまでの「はじめに」に本書の要点がほぼ書かれており、続く1~4章にその具体・補足が記されています。

少し読めば全体像をつかめる優しい作りになっており、「はじめに」を読んで面白そうだと感じたら購入する、のも良いかもしれません。

「空腹」こそ最強のクスリの欠点

  • 考えの根拠が書かれていない
  • 表現が過剰だと思う部分がある

この本のどうかと思うところ、厳しく言えば欠点だと考えたところは上の通りです。

『「空腹」こそ最強のクスリ』には、筆者の主張の礎となった具体的な根拠が書かれていないんですよね。

全体的に、「論文を読んだ」「患者を診察した」「自分でも食事法を試した」という記述が散見される程度であり、「具体的にどんな論文を読み、その論文にどう書かれていたからこう考える」という詳細な根拠が記載されていません

生活習慣病を説明する箇所では研究例を紹介していますが、肝心のオートファジーの仕組みやノーベル生理学・医学賞を受賞した研究がどんなものだったか書かれていません。

筆者はオートファジーが働きだす時間の目安を16時間としており、それが故に「16時間断食」を提唱しているわけですが、16時間と結論付けるに至った研究例が挙げられていないことも残念に思いました。

この本に限りませんが、医療や健康に関する本を読む際は、筆者が何を根拠に考えを述べているか目を凝らすことが大切だと思います。

わたしが健康本の中で良書だと思う『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介医師)や『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治医師)などには参考文献が本の末尾にずらりと並んでおり、筆者がどれほどの論文を読み込んで本を書いたかがわかります。

読者からすれば、その論文を読むことで本の内容の信頼性も確認できます。

2つの本についてはこのブログにレビュー記事を掲載しています。

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オートファジーを知りたいならこの本も

ですので、この本の位置づけはあくまでも間欠的断食への興味を深めるための「入門書」に留めておき、類書で知識を増やすのが良いと思います。

そのうえで参考になるのが2つの本です。

  • 『LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界』
  • 『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)―長生きせざるをえない時代の生命科学講義』

ライフスパンは老化研究の世界的権威とされるハーバード大学医学大学院遺伝学教授のデビッド・A・シンクレア氏が、ライフサイエンスはオートファジーの専門家である大阪大学大学院生命機能研究科教授の吉森保氏が書いたものです。

吉森氏は先述の大隅良典氏の共同研究者を務めた人物であり、著書には大隈氏とのオートファジー研究のいきさつも書かれています。

2つとも専門性が高く、また間欠的断食やオートファジー以外の説明が多いので興味の対象がピンポイントだと読み通すのが簡単ではありませんが、理解を深めるうえではお勧めできます。

改めて別の記事に書こうと考えていますが、青木氏と吉森氏ではオートファジーに関する見解で違う点もあるのですよね。

同じテーマを扱った本を複数読み、共通点と相違点を把握することで「どの情報の確度が高そうか」「どの部分がグレーなのか」が想像できるようになります

表現が過剰だと思う部分

『「空腹」こそ最強のクスリ』には表現が過剰だと感じた部分もありました。

医療本には筆者の主観を強調するものがありますが、この本は全体的に筆致がほどよく抑制されていると思います。しかし、それが故に強い表現は気になりました。

空腹の時間以外は、何を食べていただいてもかまいませんし、空腹の時間中であっても、どうしてもお腹が空いた場合は、ナッツ類などであれば、いくら食べていただいてもかまいません。(23、24ページ)

「何を」食べてもいい、「いくら」食べてもいいの、カッコ内の表現は気になりました。言い過ぎではないかと。

トータル16時間、ものを食べない時間を作れば、オートファジーによって、細胞内の古いミトコンドリアが一掃され、新しく生まれ変わるからです。(212ページ)

「一掃」という表現が気になりました。「一掃」とは「すっかり払いのけること」を意味しており、この文章で言えば「古いミトコンドリアは全てなくなってしまう」というニュアンスがあります。

本当にそうなのでしょうか。

まとめ

  • 入門書としては良書
  • 類書で理解を深めるのが良い

結論です。

どうかと思う点も書きましたが、読みやすくわかりやすいうえ、1~2時間で読了できる点は大きな魅力だと思います。

間欠的断食を知るとっかかりを作るうえでお勧めしたいですね。

「空腹」こそ最強のクスリの要約

最後に、この本の「はじめに」の要約を書きますね。重ねて言いますが、本書の要点がこの部分に集約されていると思います。

要約に当たり、本の「です・ます調」は「だ・である調」に変えました。

日本の慣例「1日3食」は食べすぎ?

科学的根拠をもとにした健康的な食事法として、「食べものの内容を制限する」ことよりも、「食べない時間を増やす」ことに注目が集まっている。

1日3食は、それだけで「食べすぎ」になってしまう可能性がある。

成人が1日に必要とするカロリーは1800~2200キロカロリー前後と言われているが、現代人の食事は高カロリーになりがち。1日3食で本来必要な量の1.5~2倍のカロリーを摂取してしまうこともあり得る。

例:ハンバーガーとポテト、ドリンクのセットで1000キロカロリーを軽く超える。ファミレスには800~1000キロカロリー程度のメニューがたくさん並ぶ。

食べすぎは体の不調や病気をもたらす

内臓の疲れ

胃腸や肝臓は食べ物を何時間もかけて消化するが、食べ物がひっきりなしに運ばれてくると休みなく働き続けなければならず、疲弊する

結果、内臓の働きが低下し、栄養素をきちんと吸収できない、老廃物を排出できない、免疫力が低下する、などさまざまな問題が生じる。

肥満

食事で摂った糖質や脂質の一部は、脳や筋肉、内臓などが働くためのエネルギーとして使われるが、余った分は筋肉や肝臓に蓄えられ、おさまりきらなかった分は中性脂肪として脂肪細胞に蓄えられる。

消費するエネルギー以上に食べると、それだけ脂肪が増えてしまう

脂肪、特に内臓脂肪からは悪玉ホルモンが分泌され、血糖値の上昇、高血圧、血栓形成などを招く

活性酸素の増加

食べすぎは体を錆びさせる活性酸素を増やす。

さまざまな病気の原因に

食べすぎは疲れやだるさだけでなく、糖尿病や高脂血症などの動脈硬化性疾患、脳出血や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、がんの原因にもなる。

糖質過多の悪影響

現代日本人の食事は糖(糖質)が多くなりがち。

成人が1日に必要とする糖質は170gと言われている。茶碗1杯の白米に含まれる糖質は50gほどなので、ご飯を1日3杯食べれば、それだけで本来必要な糖質は摂取できる。つまり、これに加えてデザートなどを食べれば、それだけで糖質過多になる。

糖質は中性脂肪に変わりやすい特徴があるので、肥満の原因になる。さらに、肝臓に異常に脂肪がたまる「脂肪肝」の原因にもなる。脂肪肝は放置すると、肝硬変や肝臓がんを引き起こすおそれがある。

糖質過多の最大の問題は、血糖値(血液中のグルコース<ブドウ糖>の濃度)を急上昇させる点にある。

血糖値が上がると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌される。インスリンには全身の細胞にブドウ糖を送り込む作用があるので、血糖値は下がるが、血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌され、今度は血糖値が急激に下がってしまう

血糖値の乱高下は「食後すぐ眠くなる」「だるくなる」「イライラする」などの症状をもたらす

糖質過多で血糖値が高い状態が続くと、①細胞が徐々にインスリンを受けつけなくなり、②すい臓が頑張ってもっとインスリンを分泌しようとし、③すい臓が疲弊する――結果、すい臓のインスリン分泌量が低下する「2型糖尿病」の発症につながる。

糖尿病になると、血糖値が下がらないため、全身の血管がダメージを受け、網膜症、腎症、心筋梗塞や脳梗塞、認知症、がんにかかるリスクが高まる

食べすぎと糖質過多の害から守る方法

ものを食べない時間を作ること。

「空腹」というとお腹がペコペコでつらいイメージがあるかもしれないが、この本でいう「空腹」は「ものをたべない状態」を指す。

空腹の時間を作ることで内臓がしっかり休むことができ、血糖値も徐々に下がる

最後にものを食べてから10時間ほど経つと、肝臓に蓄えられていた糖がなくなるため、脂肪が分解されてエネルギーとして使われるようになり、16時間を超えると「オートファジー」という仕組みが働くようになる

オートファジーとは、細胞内の古くなったタンパク質が新しく作り替えられる仕組みで、細胞が飢餓状態や低酸素状態に陥ると活発化すると言われている。

体の不調や老化は、細胞が古くなったり壊れたりすることで起こる。特に、細胞内のミトコンドリア(呼吸しエネルギーを作り出す重要な器官)が古くなると、細胞にとって必要なエネルギーが減り、活性酸素が増えると言われている。

オートファジーによって古くなったり壊れたりした細胞が内側から新しく生まれ変われば、病気を遠ざけ、老化の進行を食い止めることができる。

空腹の時間を作るメリットまとめ

  1. 内臓の疲れが取れて内臓機能が高まり、免疫力もアップする。
  2. 血糖値が下がり、インスリンの適切な分泌が促され、血管障害が改善される。
  3. 脂肪が分解され、肥満が引き起こすさまざまな問題が改善される。
  4. 細胞が生まれ変わり、体の不調や老化の進行が改善される。

さまざまな体のリセット効果が期待できる。「まさに『空腹は最高のクスリ』なのだ」

オートファジーを働かせるためには、連続して16時間以上の空腹の時間が必要だが、睡眠時間をうまく組み込めば、無理なく実行することができる。

毎日続けるのが理想的だが、週1回、週末だけ実行するだけでもリセット効果は得られるはず。

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