健康本レビュー

【ライターが要約】医師には書けない健康本『最高の体調』【感想】

「体調がすぐれない日が多い」「いつも何だか疲れている」「太りやすい」「何をやるにも集中力が続かない」「常に人生の不安が尽きない…」

私たちにつきまとう身心の悩み。

程度の差はあれど、これらのうちどれかが気になっている人は少なくないでしょう。

現代人の悩みの多くは、文明の発展によってもたらされたもの。すなわち文明病だ

そう主張し、進化論と進化医学を土台に多くの研究結果を絡めて身心の不調の改善法を説くのが、書籍『最高の体調』です。

この本、面白かったです

  • 各論に偏りがちな多くの健康本とは違い、総論を語っている
  • 専門分化が進む業界の特徴から「医師には書けない」と思う
  • 主張が全てエビデンス(科学的根拠)を基に展開されている

上記の通り、巷間に並ぶ健康本とは一線を画す内容で、下記テーマに関心のある人に一読を勧めます。

  • 体調管理
  • 病気の予防
  • 健康の維持や増進
  • メンタルコントロール
  • 人生をどう良くしていくか

医療ライターのショウブ(@freemediwriter)が、同著の特徴や内容、面白いと感じた理由について紹介します。

世界各地で行われたユニークな研究がたくさん載っているので、単にそれらを知るだけでも楽しいですよ。

『最高の体調』の筆者について

『最高の体調』は、サイエンスライター・鈴木祐さんによって書かれた本です。2018年にクロスメディア・パブリッシングにより出版されました。

同著によると、鈴木さんは科学論文を読むことがワイフワークの一つで、約10万本の科学論文を読破し、600人以上の海外の学者や専門医を取材してきたといいます。

現在はヘルスケアをテーマに書籍や雑誌の記事を書く一方、ヘルスケア企業にエビデンスの見分け方などを伝える講演も行っているそうです。

ライフハックや健康などに関するさまざまな研究をYouTubeなどで紹介しているメンタリスト・DaiGoさんとも親交があるようで、『最高の体調』の帯にDaiGoさんは「僕が日本で一番尊敬する人の本です」とコメントを寄せています。

『最高の体調』の特徴

冒頭に挙げたこの本の特徴について説明しますね。

通常の本とは違い、総論を語っている

健康本の多くは「食事」や「運動」、「睡眠」など健康に必要な要素の一つを切り取って書かれますが、この本は浅くとも広く、さまざまなテーマを網羅しています。

身体的なテーマの一部

  • 睡眠
  • 運動
  • 食物繊維
  • 腸内細菌

精神的なテーマの一部

  • 不安と孤独感の悪影響
  • 良好な人間関係の好影響
  • 価値観を持つことの好影響
  • マインドフルネスの効果

中でも、「不安と孤独感」「良好な人間関係」「人生に価値観を持つこと」それぞれが健康と相関関係があることを紹介しているのは印象的です。

私たちが「何となくそう思っているけど、でも理由はよくわからない」といった思考のもやに一条の光をさし込んでくれる内容なんですね。

医師には書けない健康本である

健康本の著者に多い医師が書かない、あるいは書こうとしてもそうはできない類の本ではないか。

『最高の体調』を読んだときに、私はこう思いました。

医師の仕事は大きく分けて「臨床」「研究」「教育」の3つがあり、割合的には個々の患者を診療する臨床医として活動する人が大半です。

さらに、医師の世界は専門医制度の浸透などによって専門分化が進んでおり、「狭く深く」を追求する人の方が多い。

こういった現状を踏まえると、鈴木さんほど幅広く多くの論文を読んでいる医師は少ないであろうことが想像されます。

かりに、日常的に論文を読む習慣のある医師がいたとしても、その分野は自分の専門領域内に留まることが多いでしょう。

エビデンスを基に展開されている

今までに書いたことから言わずもがなですが、この本に書かれている筆者の主張は(おそらく)全てエビデンスを基に展開されています。

健康本の情報には、筆者の考えの根拠が不明確なものや、根拠があったとしてもそれが医師個人の経験に留まるものもあるので、そのような情報が多い本に比べると参考にしやすいと言えるでしょう。

一方、注意してほしいことも2つあります。それは、

  • 「事実」と「考え」は違う
  • エビデンスの質が異なる

こと。

『最高の体調』では、エビデンスと筆者の考えがセットに記載されているため、ともすれば筆者の考えがまるで真実のように思われてくる可能性がありますが、筆者の考えはあくまで一個人の考えに過ぎません。

研究結果という事実をどのように解釈するかは人によって異なりますし、また「エビデンスがある」といっても、それは分母と分子の関係から成り立つ傾向性を示すもの、つまり「~である可能性が高い」という域を出ません

私たち読者が例外に与する可能性もあるわけです。

また、筆者が挙げるエビデンスも質はさまざまで、中には調査対象が数百人に留まるものもありますから、研究の規模感にも着目する必要があるでしょう。

エビデンスの質の判断方法は、医師の津川友介さんが自著『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』に書いていて、私のブログ記事でも要約しているので参考にしてみてください。

【要約と感想】『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』医師の津川友介氏が書いた『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を医療ライターがレビュー。良書です。...

『最高の体調』の結論

では、筆者の主張をざっくり要約します。

現代人の悩みの原因は「文明病」

肥満やうつ病、慢性疲労、不眠、集中力・意欲の低下など現代人が抱えやすい悩みはバラバラに起こっているように見えるが、実は根っこは同じ。それが「文明病」という視点。

②狩猟採集民に文明病はなかった

古代に生きた狩猟採集民に肥満やうつ病、集中力の低下などは確認されておらず、これらの病気や症状は文明の発展とともに生まれ、増大してきたと推測される。

③文明病は生存システムとの差異で起こる

人間の消化器系と味覚、嗅覚、脳の中枢神経はおよそ200万年前に発達したと考えられており、これらの機能は狩猟採集民が暮らした環境に適応している。

つまり、文明病は人類に備わった生存システムが現代の豊かな環境でうまく働かないために起こると考えられる。

よって、文明病を軽減するためには遺伝と環境のミスマッチが何かを考え、遺伝に沿うように修正してあげればいい。

④「炎症」と「不安」に対策を

文明病のより直接的な原因は「炎症」と「不安」。

今の日本人は体内で炎症が長期的にくすぶっていることが特徴であり、また狩猟採集民とは時間感覚が変化し、未来が遠くなったことで不安を抱える人が増えた。

炎症と不安が健康に影響し、種々の悪影響をもたらすことはさまざまな研究結果からわかっている。だから、炎症と不安それぞれに対策を打てばいい。

⑤炎症対策と不安対策

炎症対策と不安対策において、コストパフォーマンスが高いガイドラインは下の通り。

「炎症対策」

  • 自然との接触を増やす
  • 良好な人間関係を築き、食物繊維の摂取量を増やす
  • 睡眠の改善を図り、適度に運動する

「不安対策」

  • 人生の価値観を設定する
  • 有効なタスク管理法を駆使する
  • 継続的に「畏敬」を感じ、マインドフルネスを行う

こうしたことを意識・習慣化することが重要。

その上で、遺伝子が定めるルールに則って幸福を最大化させるには、他者に貢献し続けることが最適解だ。

以上です。

炎症対策と不安対策の概要については下の「面白かった研究結果」に載せました。下に記載した情報でもこの本のあらましがおよそ理解できますが、やはり文脈と具体性に欠きますし、私がピックアップしなかった箇所もたくさんあります。

拾い読みして「面白そうだな」と思ったら、1冊全て読むことを勧めます。

面白かった研究結果

「睡眠」編

睡眠不足で炎症が起こる

カリフォルニア大が2016年に行ったメタ分析によると、

  • 平均睡眠時間が1日7〜9時間の範囲を逸脱すると炎症マーカーが増
  • 夜中に何度も目が覚めるときも増

筆者は「現代人の睡眠のスイートスポットは7〜9時間の間で、これより少なすぎても多すぎても体には大きなダメージが出るよう」と話す。

「良質な睡眠」の客観的な指標

スタンフォード大が277の研究をまとめたところ、下の4つを全て満たすことが「良い睡眠」の最低条件だという。

  • 入眠まで30分以内
  • 途中覚醒が1回まで
  • 途中覚醒時、20分以内に再入眠可
  • 総睡眠時間の85%以上が寝床

睡眠改善のコツは「自然」

2016年にコロラド大が行った実験。冬山で寝起きした被験者を調べたところ、2日後に全員のメラトニン(誘眠ホルモン)が増加したという。

研究チームは「自然の光を2日浴びるだけでも体内時計は69%もシフトした」と言い、筆者は「睡眠負債を返したければ、まずは日中に太陽の光を浴びる時間を増やそう」と話す。

根拠のある睡眠改善アイテム

コクラン共同計画のレビュー論文によると、耳せん、アイマスク、マッサージ、アロマテラピー、リラックス音楽の中で効果が認められたのは「アイマスク」と「耳せん」だけだった。

「この2つを同時に使うと、睡眠中のストレスホルモンが下がり、逆にメラトニンの量が増える」

昼寝はやはり効果的

複数の実験から、昼寝をすることで注意力や論理思考力などが大幅に改善することがわかっているという。現在はグーグルやウーバーなど名だたる企業も推奨。

筆者は「最適量はまだわからないが、1回15〜30分ほどでリフレッシュ効果が得られている」と話す。目を閉じるだけでも効果的だという。

昼寝のテクニック「コーヒーナップ」

15〜20分の昼寝の直前に1杯のコーヒーを飲むこと。

こうすることで、普通に昼寝をしたグループよりドライブシミュレーターの成績が向上した実証研究があるという。

「カフェインが脳に達するまで20分かかるため、昼寝の作用にカフェインの刺激が加わり相乗効果をもたらす」と筆者は話す。

「運動」編

客観的な運動の効果

キャンベラ大が2016年に質の高い論文36件をメタ分析したところ、「どんな運動でも相応の負荷があれば脳には良い影響がある」とわかったという。

具体的には、

  • 45〜60分でストレス改善、認知機能も向上傾向
  • 週に2回と4回の運動の効果に大差はない
  • 「軽く息があがる」〜「へとへと」までの範囲で行わないと意味がない

脳機能を高めるための最低運動ライン

「1回45分の少しきつい運動を週に2回」

カールスルーエ工科大が行った実験によると、1回30〜60分の軽いウォーキングを週に2回行った学生は、運動をしなかったグループよりストレスが減り、テストの成績が上がったという。

「運動には脳と体のつながりを取り戻す作用がある」と筆者。

「腸内細菌」編

腸内細菌が減ると疲れやすくなる

コーネル大が2016年、慢性疲労症候群の患者の腸内細菌を調べたところ、同患者は健康な人に比べて腸内細菌の種類が少なかったという。また、疲れやすい人ほど炎症レベルが高かった

研究チームは、現代人の疲れに対し食物繊維やヨーグルトが効く可能性を示唆した。

腸内細菌を増やす方法

腸内細菌は主に食物繊維を食べて繁殖する」と筆者。

本来のエネルギー源は炭水化物だが、ブドウ糖の大半は小腸で吸収されるため、同細菌が住む大腸にはほぼ届かない、そこで食物繊維をエサにしているという。

厚労省は1日20〜27gの摂取を推奨するが、日本人の現状は1日13〜17gに留まる。

発酵食品の効果

ロンドン大が約4500人を10年調査した観察研究によると、普段から発酵食品を食べる人ほど心疾患や糖尿病にかかりにくく、早期死亡率も低かったという。

「注意してほしいのは、特定の食品ばかり食べないこと。それぞれ特有の細菌を持っているのでできるだけ幅広く取り入れて」と筆者。

プロバイオティクスの選び方

米リード大が43件のデータを精査した論文と、RAND(米研究所)が63件をまとめた論文で、以下のことがわかったという。

  • 慢性的な下痢や便秘にはビフィズス菌が最も有効
  • 乳酸菌、酪酸菌、糖化菌を飲むと効果増
  • 抗生物質で腸が荒れている時はLGGとサッカロミセス・ブラウディを摂取するのが良い

腸内細菌を殺すもの

加工食品

「腸内細菌は加工食品が大の苦手」と筆者。高脂肪で食物繊維が少ないファストフードや精製糖の多いスナック菓子・清涼飲料水の摂取量が増えるほど、腸内細菌が死にやすくなることがわかっているという。

「せめて全体食事量の1〜2割までに」

抗生物質

筆者によると、抗生物質の悪影響に関する研究は多く、2008年の実験では、たった1回の使用でも腸内細菌の3分の1が死に、そのダメージは半年が過ぎても回復しなかったという。

「抗生物質でお腹を壊す人は多いが、腸内環境の悪化が原因の一つだと考えられている」

「食物繊維」編

食物繊維は発病リスクを下げる

中国のPLA病院が2015年に180万人分のデータを精査したメタ分析によると、食物繊維の摂取量が多い人は少ない人に比べて以下の違いがあったという。

  • 早期死亡率23%減
  • がん発症率17%減
  • 炎症性疾患リスク43%減

筆者は「へたなサプリや健康食品を飲む前に、食物繊維を増やした方がよほど病気の予防になりそう」と話す。

食物繊維の増やし方

「野菜とフルーツの摂取を増やすのが基本」と筆者。

中でもゴボウ、寒天、海藻、キノコ類、オクラ、リンゴなどは、腸内細菌が好きな水溶性の食物繊維を豊富に含む優良食材とのこと。

「和風の食事を心がけていれば自然と摂取量も増えていく」

「不安」と「孤独感」の悪影響

農耕により現代の不安は始まった?

筆者は「農耕の出現により人々の時間感覚が変化し、長期的タイムフレームが必須になった」とし、一方のアフリカに住む狩猟採集民は今でも未来の感覚が薄く、「いま現在に集中する」という。

「永遠の現在を生きていれば、遠い未来の不安に悩むことはない。『時間の超越』とはそういうこと」

不安障害は文明病か

ワシントン大が2013年に44カ国のデータをメタ分析したところ、13人に1人が不安障害を患っていたという。

また、WHOが2017年に26カ国を調査したところ、不安障害の患者数は近代化レベルに対応していることがわかった。

「アメリカやオーストラリアでは発症率が8%前後だったのに対し、ナイジェリアのような途上国ではたったの0.1%にすぎない」と筆者。

不安レベルが高いと発病リスク増

2013年に約7万人の高齢者を10年にわたり調査した観察研究によると、日常の不安レベルが高い人は心疾患や脳卒中のリスクが29%も高まったという。

原因は不明だが、研究チームは「不安が強い人は自分を大事にしないからでは」と推測。不安が自尊心を低くし、結果的に「過度な飲酒や運動不足につながる」とした。

孤独感が強いと早期死亡率が高まる

ブリガムヤング大学が2015年に行ったメタ分析によると、孤独感はタバコや肥満と同じくらい全身に炎症を起こし、早死にリスクを高めるという。

具体的には、孤独感が強い人は早期死亡率が26%増加し、社会からの孤立が長引けば、この数字は32%までアップした。

「良好な人間関係」の好影響

良い友人ができると寿命が延びる

ブリガムヤング大が2010年に31万人分のデータを精査し、寿命を延ばす効果が高い要素を抽出したところ、「良好な社会関係」がずば抜けて高かったという。

同メタ分析では、孤独な人に友達ができた場合、最大で15年も寿命が延びる傾向が確認され、この健康効果はエクササイズやダイエットの約3倍に相当するとのこと。

禁煙よりも友人の方が健康に対する影響が大きかった」と筆者。

人間の最大幸福は良い人間関係

ハーバード大が1939年から約80年にわたって724人の人生を記録した「成人発達研究」で、「人間の幸福にとって最も大事なもの」を数字で割り出したところ、それは「良い人間関係」だったという。

研究チームのリーダーは「私たちの体を健康にし、心を幸福にしてくれるのは富でも名声でもがむしゃらに働くことでもない。それは『良い人間関係』だ」と話した。

親密な関係を築ける友人の数

進化心理学者のロビン・ダンバー氏が2014年に行った調査によると、親密な関係を築ける友人の数は「5人前後だった」という。同氏はその理由について、「多大な認知機能と感情の投資が必要になるからだろう」と推測する。

筆者は、ハーバード大の成人発達研究で「親友が1人いるだけでも孤独によるダメージが減ること確認された」ことに触れ、「自分にとっての真の理解者を1人だけ得られればそれで十分」と結論付けた。

良好な友人関係を保つために必要なもの

アイオワ州立大のダニエル・フルシュカ氏が2010年に行った調査によると、良好な友人関係を保つために最も必要なものは、性格やコミュニケーションスキルなどではなく、「一緒に過ごす時間の長さ」だったという。

また、心理学者のロバート・ボーンスタイン氏も自身が行ったメタ分析の結果から、「特別な刺激がなくても他者と接触する時間を増やせば好意は増す」とした。

自然の健康効果

自然との触れ合いで疲労軽減

2016年に871人分のデータをまとめたダービー大は、「自然との触れ合いにより、確実に人体の副交感神経は活性化する」と結論付けた。

筆者は「副交感神経は気持ちが穏やかなときに働き出す自律神経。自然は日中にたまった疲れやダメージを回復させる働きを持つ」と話す。

公園利用で発病リスクが減る

2016年、クイーンズランド大が1538人を対象に公園などの自然と触れ合った量とうつ病、高血圧の発症率の関係を調べたところ、下記結果が得られた。

  • 週に1回30分、自然の中にいれば、そうでない人に比べてうつ病の発症リスクが37%減
  • 高血圧の人の場合、週に1回30分を超えたあたりから症状が改善

偽物の自然でもリラックス効果

アムステルダム自由大が行った実験で、緑豊かな公園の写真を5分見た人は副交感神経が活性化、心拍数が低下したという。

また、サセックス大の実験では、風の音や虫の声を5分25秒ほど聞いた人にリラクゼーション反応が見られた。

これらのことから筆者は、「パソコンやスマホの壁紙を自然の画像に設定して、通勤中に自然音を聞くのが自然を取り入れる始めの一歩」と話す。

観葉植物でストレスが軽減

ノルウェーで行われたオフィスワーカー385人を対象にした実験では、デスクの上に観葉植物を置いた従業員ほど主観的なストレスが低かったという。

またオフィスワーカー350人への別の実験では、観葉植物の前で仕事をした人は作業効率が38%増え、幸福感は47%上がったとのこと。

身近な製品・サービスの悪影響

スマホが視界に入るだけで集中力が下がる

テキサス大が2017年に行った研究によると、スマートフォンを視界に入れるだけで集中力が下がることがわかったという。

電源オフのスマホを目の前に置いたグループと、視界から遠ざけたグループを対象に集中力がどれだけ持続するかを調査したところ、前者の集中力は後者の半分まで下がった。

研究チームは「デジタルデバイスが近くにあるだけで認知機能は大きく低下する」と話す。

高頻度のメールチェックはストレスの元

ブリティッシュコロンビア大の実験によると、スマートフォンの通知を切ってメールチェックを1日3回までに減らした被験者は、仕事中の緊張やストレスが和らいだという。

「デジタル断食のすすめ」として筆者は、「初歩として効くのは、あらかじめSNSやメールチェック時間を決めておくこと」と話す。

薬用ソープは有益なバクテリアも殺す

「抗生物質と同じく使用を控えたいのが抗菌グッズ」と筆者。薬用ソープに使われる抗菌成分が、肌に住みつく有益なバクテリアまで殺してしまうという。

中でも「注意してほしい」というのが、トリクロサンとトリクロカルバン。ホルモンバランスを乱す作用を持ち、米国FDAも「害が大きい」と警告。米政府は「消費者は薬用ソープで雑菌の繁殖を防げると思っているが、今のところ薬用ソープの効果を示す証拠はゼロ」とコメントしたことがあるそう。

手や体を洗いたいなら、昔ながらの石けんや石けん素地だけを使ったボディソープを使うのが良い」と筆者は話す。

価値観が健康に影響する事実

価値観を持つと死亡率が下がる

ロチェスター大が2014年に行ったコホート研究で、6000人の男女に「価値観を持って生きているか」と質問したところ、同意した人はそうでない人に比べて14年後の死亡率が15%低かったという。

研究チームは「価値観が明確な人は、自然と健康的な食事と運動を実践している」。

価値観の強さが収入にも影響する

コーネル大が5000人を10年ほど追跡調査したところ、自分の価値観に従って日々を暮らしている人ほど年収と貯金額が多く、また人生の価値の強さが標準偏差から1つ高くなるごとに、貯金額は244万円ずつ増えたという。

筆者は「人生の価値観が仕事のトラブルへのバッファー(緩衝材)として働くからだろう」と話す。

価値観と目標の違いに注意

「価値観と目標は混同しやすいので注意してほしい」と筆者は話す。「クリエイティブな仕事に就くこと」や「結婚すること」は目標である一方、「クリエイティブな人間でいること」や「好きな人と楽しく暮らすこと」は価値を示す。

価値の裏づけがないと、目標は不安の原因になってしまう。価値に基づく行為は時間の心理的距離を“いまここ”に収束させ、未来への不安を消し去ってくれる」

人が幸福を感じやすい価値観

幸福を感じやすい価値観についてミシガン州立大が約20万人のデータをメタ分析したところ、以下の4つの項目が答えとして得られたという。

「自治」…どれだけ人生をコントロールできるか

「多様性」…仕事や人間関係に多彩さがある

「困難」…人生のタスクに適度な難しさがある

「貢献」…他者の役に立っているか

これらの中でも飛び抜けて影響が大きいのが、「貢献」だった

人生の価値観を見定める方法「ACT」

人生の価値観を考える際に役立つのが先端心理療法「ACT」だという。これは、不安への対処法を学ぶとともに自分の価値観を見定め、それに合った行動を増やすもの。

1821人のデータを精査したメタ分析では、「ACTはサイコセラピーや心理教育などよりも不安障害への効果が高く、人生の満足度も上がる」と結論付けられた。

ACTにおける自分の価値観とは、以下のようなものだと筆者は話す。

「もし既に使いきれないほどの金を手に入れ、理想の仕事につき、毎日が幸福感に満ち溢れていて、誰からも尊敬されていたとしたら、私はどのように行動するだろうか?

全てが満ち足りた状態でもなお行動せずにいられない物事こそが、心に眠る本当の価値観

正当性の高い「価値評価スケール」

筆者によると、人生の価値観を探る際に、現時点で最も科学的に正当性が高いのは、ミシシッピ大学のケリー・ウィルソン氏が開発した「価値評定スケール」だという。

多くの臨床現場で使われていて、うつ病や不安障害などの治療に効果を発揮しているとのこと。

不安を減らすためには

未来を今に近づける

スタンフォード大のブライアン・ナットソン氏が2009年に被験者の時間感覚と時間割引率を調査したところ、未来との心理的距離が近い人ほど不安に強く、セルフコントロール力も高いことがわかったという。

筆者は「自己連続性が高い人ほど、現在の決定が未来に及ぼす影響を実感できるようになる」と話す。

優秀なチームは肯定発言が多い

ロードアイランド大が2004年、有名IT企業の60の部署を対象に優秀なチームとダメなチームの違いを調査したところ、最も高収益の部署はポジティブな発言がネガティブな部署の6倍も多かった。

「ネガティブな感情は私たちの心をかき乱す劇薬」と筆者。

ストレスに効く一言

「楽しくなってきた」「興奮してきた」と肯定的に言い聞かせるのが「リアプレイザル」と呼ばれる方法。

ハーバード大のアリソン・ブルックス氏が300人を対象に行った実験によると、リアプレイザルを実践したグループは17〜22%成績が上がったという。

筆者は「外部反応を『緊張』か『興奮』のどちらに解釈するかは脳の判断。リアプレイザルは感情の筋トレになる」と話す。

不安を減らすためのタスク管理法

優秀な従業員は時間をルール化する

ラトビアのIT企業・ドラウジエム社が行った調査によると、生産性が高い従業員の上位10%は、平均で52分働いた後に17分休むというインターバルを守る傾向があったという。

このほかにも、筆者は他職種におけるトップパフォーマーの仕事と休憩の時間配分を挙げている。

  • 精肉工場従業員→51分:9分
  • 農業従事者→75分:15分
  • プログラマー→50分:7分

有効なタスク管理法①「3のルール」

有効なタスク管理の方法として、筆者は「3のルール」を紹介している。これはソフトウェア工学から生まれた技法という。

  • 「今日」「今週」「今月」「今年」においてやり遂げたいことを3つ書き出す
  • 毎週末にうまくできた点、改善点を3つずつ書き出す

「なぜ効果的か。人間の脳は一度に『4±1』種類の情報しか処理できないから」と筆者。

有効なタスク管理法②「イフゼンプランニング」

筆者は「3のルール」以外にも、有効なタスク管理の方法として「イフゼン(if-then)プランニング」を挙げる。

これは、「もしAが起きたらBをやる」と実行タイミングを決めておくだけ。1980年代に社会心理学の世界で生まれた技術で、心理現象「実行意図」をベースにしている。ニューヨーク大が94件のデータをメタ分析したところ、イフゼンプランニングによって目標達成確率が格段に高まることがわかったという。

さらに効果を高めたければ、「予想される障害に対してプランニングしておく手法も有効」と筆者。例えば、「ジムに行く」というタスクがあり、「急にやる気がなくなる」という障害が予想される場合、それが実際に起こったら「とりあえずジムの近くまで行く」と決めておく、といったようなこと。

筆者は「なんとも単純なテクニックだが、メタ分析によれば普通のイフゼンプランニングより20〜30%達成確率が高くなる」と話す。

死の不安への対策

死を想うと人生が良くなるか

筆者は、スティーブ・ジョブズや哲学者セネカ、詩人ホラティウスの発言や聖書の内容を引き、「『死を想え』は世界最古からのライフハック」と話す。

フロリダ州立大が行った実験によると、墓場の前を通るよう指示された被験者は、すれ違った人が落とした荷物を拾ってあげる確率が40%増えたという。

「死を想え」はマイナスにも働く

一方で、「死を想うこと」はマイナスにも働くと筆者は話す。

FBIの統計によると、2000年に33件だったイスラム教へのヘイトクライムは米同時多発テロが発生した01年は600件に急増。

また、ロンドン大が被験者に死の恐怖を思い出させた後でどれだけ健康的な食事をしたくなったか調査したところ、反応は真っ二つ。ジャンクフードやタバコへの欲が増えた人も少なくなかったという。

死の不安への解決策「原始仏教」

死への不安を和らげる方法として、筆者はブッダの思考を紹介する。

ブッダは「全ての欲望はフィクション。全ては外部刺激への反応であり、そこから生まれた欲望が特定の形や永遠の構造を持つことはない」とする無常観を説いた。

「ありもしない自己に執着心を持つからこそ、不安が生まれる」というブッダの考えは「参考にはなるものの、これは難しい方法だ」と筆者は考える。

現代に有効な不安軽減法「畏敬」

そこで筆者が提案するのが、狩猟採集民の死生観とブッダのアイデアをミックスさせることで、それは「畏敬」と「観察」。「畏敬」とは、自分の理解を超えるような対象に触れた際にわきあがる感情を指す。

畏敬の客観的効果

カリフォルニア大が2015年に200人の学生を調査したところ、畏敬の感情を体験した回数の多い人ほど、不安や炎症レベルが低かったという。

同大研究チームはこう話す。

畏敬の念には、炎症物質を適切なレベルに保つ作用がある。自然の中を歩いたり、素晴らしいアートに触れたりといった活動は、ポジティブな感情を引き起こし、健康や長寿に大きな影響を持つ

2700人対象の別調査でも畏敬の効果が確認されたという。

また、ハーバード大が約7万5千人を10年にわたって調査したところ、週1回のペースで礼拝に参加した女性は、全く教会に行かない女性に比べてその後16年間の死亡率が33%減った。

筆者によると、信仰心が高い人ほど自殺率が下がったり、特定の宗派やスピリチュアルを信じる人ほどがん患者の予後が上がったりした調査結果もあるそう。

現代人がアクセスしやすい3つの畏敬

筆者は、現代人がアクセスしやすい畏敬として「自然」「アート」「人」の3つを挙げる

「自然は最強の炎症対策であり、音楽や映画、演劇など高度な創造性を持つアートは、私たちに人間を超えたかのような感覚を与え、時間を超越したかのような意識をもたらす」とし、「歴史上の偉人などカリスマ性を備えた人物も畏敬の念を生む」と話す。

マインドフルネスの効果①

「マインドフルネス」は1970年代にマサチューセッツ大のジョン・カバット・ジン氏が提唱したアイデア。

従来の心理療法に曹洞宗で行われる座禅の要素を組み込み、仏教でいう「念」の概念を「マインドフルネス」と訳した。

筆者によると、効果は少しずつ認められ、1990年代からは臨床試験も増えたという。

マインドフルネスの効果②

ジョンズ・ホプキンス大が47件のデータをメタ分析したところ、マインドフルネス瞑想を実践すれば、不安、うつ、慢性痛がほぼ確実に減ることがわかったという。

データによると、1日に30〜40分の瞑想を8週間ほど続ければ、薬物療法と同じレベルで不安とうつが和らぐ。副作用もないとのこと。

マインドフルネスの応用①

ユタ大が2015年に行った実験で、被験者に「皿洗いに集中せよ」「水の温度や洗剤の泡の感覚に意識を向けよ」と指示したところ、6分間で不安や神経症のレベルが27%下がり、アイデアが思いつく確率が25%増えたという。

筆者は「家事をマインドフルに行うだけでも不安は減っていくだろう」と話す。

マインドフルネスの応用②

自分の動きに意識が向くようなレベルの運動を20〜30分キープすると、「運動によって起きた生理的な変化のおかげで、自動的に自分の体を観察する態度が生まれる」と筆者。

軽く息が上がり、他人と会話できないくらいの負荷を保つのが理想だという。

炎症対策と不安対策のガイドライン

炎症対策

  1. 自然との接触
  2. 良好な人間関係の構築と食物繊維の摂取
  3. 良好な睡眠と適度な運動

不安対策

  1. 価値の設定
  2. タスク管理
  3. 畏敬感受とマインドフルネスによるメンテナンス

遺伝子が定めるルールの中で幸福を最大化させるには、「他者への貢献が最適解だろう」と筆者は話す。

「人間の遊び心は幸福度と高い相関」

心理学者のレネ・プロワイエ博士が4100人に行ったインタビューの結果。

「現代人の問題を解決するには、仕事・育児、勉強といった人生のあらゆる面を『遊び化』していく必要がある」と筆者。

空気清浄機の選び方

「『HEPA』というフィルタさえ搭載されていれば、どれでも大差ない」と筆者。これは0.3マイクロメートルのホコリを99.97%ブロックする、家庭用としては最高性能のフィルタだという。

カビの胞子は3〜10μmなので、十分にとらえられるそう。1μm=1000分の1mm。