体にイボができて気になってるけど取るのは何だか怖い…。「冷凍凝固術は痛い」って聞いたけど、他に方法はないの?
今回は、こんな悩みや疑問を抱える人に向けて、右の足首にできたイボを専門クリニックで切除した高校時代からの友人R君(36歳)の体験談を、医療ライターのショウブ(@freemediwriter)が取材形式で紹介します。
R君がイボの存在に気付いたのは約15年前。当初は2㎜ほどで「すごく小さかった」そうですが、数年かけて徐々に大きくなり、色も濃くなっていったといいます。
意を決して除去することを決めたR君。しかし思いのほか治療時間は短く、痛みも小さかったそうで、「これならもっと早めに医師に相談すれば良かった」。
詳しく聞きました。
(取材日2020年11月16日)
※この記事では、30代の男同士が病気やその治療について話している模様を忠実に再現しようと、1人称(話し手・書き手が自分自身を指す語)のQ&A形式にし、編集はなるべくしないようにしました。
わたしたちの出身地である大分県中津市の方言のまま記載しているので、中には読みづらい箇所があるかもしれません。ご了承ください。
イボに気付いてから受診するまで
――イボがあることに気付いたのはいつごろ?
大学1、2年(2004、05年)の夏。サンダルを履いてるときにふと右の足首を見たら、丸い突起物があって。ただ、当時の大きさは直径2㎜くらいですごく小さくて、色も周りの肌と同じやったから、「まあ、気にせんでいいか」と。
それから靴下を履くときに(イボが布に)引っかかるからその存在を意識するようになったんやけど、痛みとか違和感とかはなかった。
――大きさが2㎜で色が皮膚と同じやと気にせんかもね。気になりだしたのは?
社会人になって1、2年目(2008、09年)くらいの帰省したとき、おかんに「あんた、それめっちゃでかなってるよ」っち言われて。イボに気付いたころにおかんに話はしてて、実際に見せてもいたからさ。
それで前より気にするようになったんやけど、まだ病院に行こうとは思わんかった。
ただ、だいぶ経ってから痛むようになったんよね。
仕事用の革靴を履いてるときは大丈夫なんやけど、構造的に靴とイボが当たりやすいローファーを履いてるときなんかにチクッとした痛みを感じるようになって。
――それからまた時間が経って、イボに気付いて15年後くらいの今年4月に受診したと。何か直接的なきっかけはあった?
おいっこにも言われたから。
去年の夏に帰省したとき、当時5歳くらいの妹の子どもに「おじちゃん、何これ?」っち言われて。「これはイボや」と。
んで、冬にまた帰って会ったら、あんな小さいがきんちょのくせに覚えちょったんよな。「おじちゃん、イボ見せて! イボ見せて!」。見せたら「うぇーい、イボや! イボや!」っち喜ぶ。
それを見てちょっとショックやった。「俺のイボはこんな小さな子どもが見ても違和感を感じるくらいなんや…」と。
――(笑)。面白いけど、「小さい子が見てもわかるからショック」っち、イボができた当事者やったらそう思うんかも。ある意味で真に迫るっちゅうか。
あとは同年代の友だちにも言われるようになったんよね。切除したときのイボの大きさは気付いたころの倍の4、5㎜くらいやったから、ローファーを履いてるとイボが見えて「お前それ何? そんなでかなってて痛くないの?」っち聞かれるようになって。
しかも、色もちょっと濃くなってたから。
で、コロナが起きてうちの会社も在宅勤務が増えて暇になったから、これを機に病院に行ってみようかなと。
イボ除去の医療機関の選び方
――医療機関はどこにしたん? どうやって探した?
行ったのは、上野の「アイシークリニック」。ここはイボを含めて皮膚の病気を専門的に診てるところらしく。
ネットで「イボ除去」とかで検索したらすぐにここのリスティング広告(検索エンジンで、ユーザーが検索したキーワードに関連した広告を検索結果ページで表示するサービス)が見つかって。
――最初に目にしたのが広告で、違和感とか拒否反応とかはなかった?
それはなかったな。
美容とかそれに近い領域なら、むしろ規模の大きいクリニックや広告を打ってるところの方がいいような気がしたんよね。歯とか内臓とかの病気やったらもっとよく調べたと思うけど。
広告業界におるからわかるんやけど(R君は不動産分野に注力する広告代理店の営業)、リスティング広告を打つには事前に審査があるからある程度しっかりしたサイト内容じゃないと通りにくし(調べたところ、誇大広告や薬事法違反などの場合には落ちるそうです)、そもそも(経営が)回ってないと広告は打てんし。
計3つくらいの医療機関のホームページを見て、俺ん家に一番近いそこにしたわけ(R君は上野駅に近い場所に在住)。
アイシークリニックでの診察
――当日の診察の流れについて教えてもらっていい?
担当してくれた先生は俺らよりちょっと年上の40代くらいの女医。
ネットで前日に予約したんやけど、当時はコロナで皆マスクをするようになったから逆にホクロとかを取りに来る人が増えたらしく、30分から1時間くらい待たされた。
で、診察が始まって先生が「どうされました」と。「足にイボがあって、悪性じゃないか気になってるんです」「見せてください」「痛いですか、いつからですか」とかちょっと会話した後、「今日取りますか」って。
え? と。その日は悪性じゃないか診てもらうつもりで、手術するとなったら大ごとやなと。心の準備もできてないし。
「今日いきなり取れるんですか?」っち聞き返したら「この大きさなら(治療開始から)30分で全て終わりますよ」と。
部分麻酔をするから痛みは小さいし、治療自体は15分くらい、「実際はもっと短くて済むと思う」と言われて。
悪性かどうかを調べるためには組織を切り取る必要があるけど、この大きさなら全て取ってしまった方が(いいのでは)という話でさ。
――とんとん話が進んだんやね。
そう。俺としてはいきなりそう言われて「え…」っち感じやったんやけど、先生が「さほど大がかりな治療じゃない」ちゅうニュアンスで笑いながら説明してくれて、見た目の感じやと「あなたのはおそらく悪性ではないだろう」とのことやったけ、ちょっと安心してさ。
(同院ウェブサイトによると、イボによく似た病気に皮膚がんの一種であるメラノーマや基底細胞がんがあるそうです)
それで、「じゃあ、お願いします」と。
アイシークリニックでのイボ除去方法と費用
――そのときに、除去の方法とか費用についても説明されたんやろ?
うん。保険と自費それぞれの方法と費用について教えてもらった。
保険の方はメスで切り取った後に患部を縫合して、後日、抜糸する方法。切除後に患部は黒くなるけど、時間が経つと徐々に色が薄くなってサイズも小さくなるそう。
縫った痕が残る可能性があるけど、俺の場合、「まだ若くて回復が早いから残りにくいと思う」って。費用は1万円くらい。
自費の方はレーザーを照射する方法で、基本的には顔とか切開したくない部位の、俺の足にあったイボ(直径4、5㎜ほど)よりも小さいものに行うことが多いそう。
切開とは違って治療が一度で終わらん、つまり何度か照射せんといかん場合があるらしいけど、切開よりも痕が残りにくいのが長所らしい。費用は1万8千円くらい。
――で、どっちを。
保険の方。先生が「基本的には保険の方でいいんじゃないですか」っち言って、俺としても、イボがあるのは人目に触れにくい足やから多少痕が残ってもいいかなと。
それで、意を決して「…わかりました、やります!」っち言ったんやけど、先生はまた「そんな大がかりな治療じゃないから大丈夫ですよ」みたいな感じで笑いよったな(笑)。
――嫌な感じやなかった? 患者を見下してるみたいな。
いや、愛嬌のある感じやったよ。さっきも言ったけどそれで俺も安心したし。でも、よくよく考えると、もしかしたら患者によっては嫌な気持ちになる人はおるかも。
――嫌な感じやなかったんなら良かったね。患者の多くはRみたいに不安な気持ちを抱えて行ってるわけやから、医師の振る舞いによっては傷つくことがあると思う。
アイシークリニックでのイボ除去の模様
――治療の流れを教えてもらっていい?
診察室を出て、受診前に書いたものとは違う手術用の問診票に記入して、30分ほど待った後に診察室よりも広い手術室に通された。そこには診察を担当してくれた先生と看護師がおって。
ベッドに寝たら早速手術が始まって、先生がバイブみたいな振動する機器を患部にブブブと当てながら部分麻酔の注射をしてくれた。(振動する機器に対して)「何してるんですか?」っち聞いたら「こうした方が麻酔が効きやすくなるんですよ」って。
(調べてみたら、歯科の局所麻酔では患部の周辺を振動させる機器が使われることがあるようです。患部周囲を振動させることで末しょう神経が刺激され、針を刺したときの痛みが緩和されるとのこと。
一方で、医科の麻酔時に何のために使われるかは詳しい情報を得られませんでした。もしかしたら、医科でも麻酔が効きやすくなるというより、痛みの緩和のために使われている可能性があると思いました)
――で、麻酔が効き始めたころにメスを。
うん。注射してから5分10分経った後に先生がトントンと患部に触れて麻酔の効き具合を確かめて。感覚がだいぶ鈍ってたから「じゃあ、やりますね」と。
それからは早かったよ。
患部は先生の手で見えんかったけど、先生の手の動きからメスでイボのふちをくり抜いているようやった。
20秒くらいして先生が手を離したから何か作業を変えるんかなと思ったら、「終わりました」と。「え、もう終わったんですか」と。
切除した後はすぐ縫合してくれて、それが終わったのを含めても手術開始から1分くらいしか経ってなかったと思う。めっちゃ早かった。
ただ、痛みは少しあったね。採血のときの注射よりもうちょっと痛いくらい。耐えられんほどやなかった。
――イボの状態によるんやろうけど、Rの場合はそんな早かったんや。その後は?
炎症止めのステロイドを塗った後にガーゼをはられて。あとはアフターケアに関する説明をされて終了。切り取ったイボは病院に送って、悪性じゃないか組織を調べてもらうって。
治療後の注意点については特に言われんかった気がするんやけど、覚えてるのは「当日は患部を塗らさんように入浴して」「毎日薬を塗るように」くらいかな。
あとは2週間後に抜糸するから来てくださいって。都合が悪くて行ったのは3週間後やったんやけど、そのときに組織を調べた結果も教えてくれて、悪性やないと。
――麻酔が切れた後に痛みはなかった?
なかったな。歩いて家まで帰ったけど普通に帰れたし、その日の夜(手術を受けたのは夕方)も痛みは出んかった。
次の日にガーゼをはがして患部を見たら、周りの皮膚をつまんで縫合されてたからぼこっと盛り上がってた。色は周囲の肌と同じ。糸はジグザグに縫われてた。
そんなに気にならんかったけど、縫合部の端から糸がぴょこんと出てて、それが靴下を履くときに引っかかってちょっと痛かった、覚えてるのはそのくらい。
――手術はすぐに終わって、痛みは小さく、術後も不具合がなかったと。良かったね。患部はどう変化していった?
さっき言った通り、手術翌日の患部の色は肌と同じやったんやけど、数日で黒ずんでいった。腫れは徐々に引いていったよ。
当初の黒ずみはイボのサイズよりも大きかったね。写真を見るとわかると思うけど、俺のイボはおにぎり型になってて、肌の表面に出ている部分より中に埋まっている部分の方が大きかったから、その分、黒ずむ範囲も広がったんやと思う。
でも、黒ずみの大きさはこの数カ月で小さくなって、色も少し薄くなった。
先生が言うには、黒ずみは1、2年かけてさらに小さくなって、うまくいけばなくなるらしい。まあ、俺としては目立たん足やけ多少残ってもいいかな。
――ありがとう。いろいろと参考になりました。最後にイボを取った経験を振り返っての感想をお願いします。
もっと早めにやっておけば良かったと思う。いや、取るのは痛いんやねぇかなっち思ってたからさ。「冷やして取る方法は痛い」っち噂で聞いたこともあったし。
イボの状態や治療の方法にもよるんやろうけど、俺の場合は痛みが小さくてすぐに終わったから、「これならもっと早めに」っち思った。
悪性じゃないこともわかったし、イボができて気になってるなら早めに医師に相談した方がいいんやないかな。
(R君が話していた『冷やして取る』は冷凍凝固術と呼ばれる方法だろうと思います。同院サイトによると、イボ治療は一般的にこの方法が採用されやすいものの、痛みが強いなど複数の欠点があると指摘していました)
イボとは
最後に、イボについて簡単に説明しておきますね。インタビュー内容を先に読んでもらいたかったので、意図的にこの順序にしました。
わたしは過去、イボとその治療方法について専門家を取材したことがないのでよくわかりませんが、同院サイトによると、イボはウイルスの一種である「ヒトパピローマウイルス」が皮膚に感染することで起きるそうです。
感染経路としては人を介した直接感染と、スリッパや足ふきマット、プールなどを介した間接感染がありますが、実際の原因はよくわからないことが多いといいます。
「イボ」と一口に言っても種類が複数あるそう。サイトには7つが挙げられていて、R君がどれに当たるか知りたかったのですが、医師の口から詳細な名は教えてもらっていないそうで、見せてもらった診療明細書にも記載されていませんでした。
イボについて興味のある方はサイトを参考にしてみてください。
医療ライターの庄部でした。
記事内の情報、考え、感情は書いた時点のものです。
記事の更新情報はツイッター(@freemediwriter)でお知らせします。
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