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「うがいで風邪予防」なぜ最近見ない? 本当に効果があるのか調べた

「ひと昔前は『風邪予防のためにうがい・手洗いをしよう』って言われてたけど、最近は『うがい』の文字を見ないな」「うがいって本当に効果があるの?」

今回は、こんな疑問や興味を持つ人のために、医療ライターのショウブ(@freemediwriter)がうがいの有効性を調べました。

これは、わたしの関心事でもあります。

冒頭に書いた通り、最近は感染症予防のためにうがいを勧めるメッセージを目にする機会が減ったように感じていて、新型コロナウイルス感染症の予防策でも厚生労働省は「マスクの着用」と「手洗い」、「手指のアルコール消毒」は勧めるものの、うがいには触れていません

新聞などのメディアの記事、医師会や医療機関のウェブサイトを読み、厚労省や医師の見方も踏まえると、こんな結論になりました。

感染症予防に有効なのはうがいよりも手洗い。ただ、うがいも有効性が示唆される研究があるので、やらないよりはやった方がいいかも

理由を書きますね。

インフル予防に効く根拠はない

日本では長く「風邪予防にうがい・手洗い」と言われてきましたが、世界的に見るとうがいを勧めるのは珍しく、欧米などでは普及していないといいます。

国内でもインフルエンザ予防への有効性は疑問視されてきたそうで、結局のところ予防に効くというエビデンス(科学的根拠)が見つからなかったため、厚生労働省はホームページやインフルエンザ予防のポスターからうがいの項目を外したそう。

2018年1月のウェザーニュースの記事では、「うがいはインフルエンザを予防する効果があるというエビデンスがなかった」と厚生労働省の担当者が話していたと書かれており、また新型コロナウイルス感染症の予防の面でも「(うがいが有効という)科学的に確立されたエビデンスはない」という同省担当者の発言が2020年9月の朝日新聞の記事に書かれていました。

「うがいでウイルスが流れると感染しづいのではないか?」

こんな疑問を抱く人がいると思うのですが、そもそもウイルスはのどの粘膜に付着すると短時間で細胞内に侵入してしまうそうなんですね。

うがいはのどの粘膜についたウイルスを洗い流す作用が期待されているが、ウイルスは早くて20分程度で細胞内に侵入してしまうため、本当に洗い流せるかというと難しい

2019年1月の日経Gooday30+に、北海道科学大学薬学部客員教授の岸田直樹さん(総合診療医・感染症医)がこう話していたと書かれていました。

複数の医師会のホームページにも、ウイルスが細胞に侵入するまで「20分程度」と書かれており、これが事実であれば、感染症の予防目的にうがいをするとなると高頻度でないと有効性が低いことになります。

風邪予防の有効性を示す研究も

国はインフルエンザと新型コロナの予防について「うがいが有効であるエビデンスはない」としていますが、「風邪」の予防に関しては一つ、有効性を示唆する研究がありました。複数のメディアでも紹介されていました。

それは、京都大学の川村孝教授らの研究チームが2005年に国際医学誌「American Journal of Preventive Medicine」に発表したものです。

研究チームは18歳から65歳のボランティア387人を「水うがい群」「ポビドンヨード液うがい群」「うがいをしない群」に分け、2カ月間の風邪の発症状況を調査。うがいをするグループは少なくとも1日に3回、うがいをしたといいます。

ポビドンヨードは殺菌成分であり、「イソジン」などのうがい薬に含まれています。

その結果、うがいをしない群では1カ月で100人中26.4人が風邪を引いたそうですが、水うがい群では17人に留まり、発症率が40%抑えられました

川村教授は「うがいをすることによって、ウイルスを活性化するハウスダスト中のプロテアーゼが洗い流されるためではないか」と話していたといいます。

一方、ポビドンヨード液群では23.6人が風邪を引き、発症抑制率は水うがい群より低い12%だったそうです。

川村教授はこの結果に対して、「ヨード液が正常な細菌叢(そう)まで壊すためではないか」と推測。前出の岸田さんも同じ意見であり、「ヨード水が口の中の細菌叢(そう)を乱してしまうからと考えられる」とし、「口の中の細菌が風邪の原因になるウイルスの侵入を防いでいる可能性がある」と話しています。

では、うがいをするとして、どうすればいいか。

川村教授は「日常の風邪予防には水うがいで対応し、感染が明らかなときにヨード液を用いるなど使い分けが大事」、岸田さんは「普通の水や白湯でのうがいで十分」としています。

まとめ

  • 欧米では感染症予防にうがいを推奨していない
  • 厚労省もうがいを勧める情報を削除
  • インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の予防について、「うがいが有効」というエビデンスは今のところない
  • 風邪の予防については400人規模の研究で有効性が示された結果がある

まとめるとこうなります。

ウイルスがのどの粘膜に付着してから20分ほどで細胞に侵入すると考えられていることを踏まえると、やはり予防策としては国が勧める通り、「マスクの着用」と「手洗い」、「手指のアルコール消毒」が優先されるのではないでしょうか。

「粘膜に付着する手前でどれだけ防いでいくか」という観点で考えた方が良さそうだとわたしは思いました。

とはいえ、風邪予防の有効性を示唆する研究結果も(規模がさほど大きくないとはいえ)あるので、「うがいが無意味」とは断言しづらいようです。

このあたりは生活者一人ひとりが自分なりに考えて優先順位を整理し、実行するといいように思います。

医療ライターの庄部(@freemediwriter)でした。

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