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ユニバーサルマナー検定3級の講座内容と感想【認定者がレポート】

町で見かけた障害者にどう声をかけるといいのだろうか。彼ら彼女らが何らかのサポートを欲しているとき、どんなふうに接すると助けを受けやすいのか

詳しくは後述しますが、ここ数年の自分の問題意識に変化を与えたいと、2020年10月17日、東京都三鷹市の会議室で開かれた「ユニバーサルマナー検定」3級の講座を受講しました。

主催者は一般社団法人「日本ユニバーサルマナー協会」。同団体は現在、障害者や高齢者などへの向き合い方や接し方を指す「ユニバーサルマナー」を学んでもらおうと、全国各地で講習会を開催しています。

  • ユニバーサルマナーとは
  • ユニバーサルマナー検定とは
  • ユニバーサルマナー検定3級の内容
  • 障害者や高齢者への向き合い方や声がけのポイント

今回の記事では、医療ライター・ショウブ(@freemediwriter)が同検定の存在を知った経緯や受講した理由などを絡めつつ、上の4つについて書いていきます。

ぼくが参加した回では難病の患者が講師となり、自身の体験を踏まえながら語ってくれました。

障害を抱える人が日常的にどんなことに不便を感じているか、健常者からの接し方に対してどんなことを感じているか生の声が聞けてとても参考になりました。参加して良かったです。

ユニバーサルマナーとは

「ユニバーサルマナー」とは、同協会が提唱する造語です。

ユニバーサルマナー検定のウェブサイトによると、高齢者や障害者、ベビーカー利用者、外国人など「多様な方々に向き合うためのマインドとアクション」を指すといいます。

ぼくが参加した同検定3級の講座の講師であり、難病の骨形成不全症を抱える畠中梨絵さんによると、過去、人々が高齢者や障害者と接する機会は医療や福祉の現場に限定されやすかったといいます。

しかし、高齢化の進展や道路舗装、エレベーター設置などの環境整備が進み、障害者などが外出しやすくなりました。「実際に私の場合も、10年、20年前に行けなかったところへどんどん行けるようになっています」と畠中さんは言います。

2018年版厚生労働白書などによると、日本が100人の村だとすれば、障害者や高齢者などの割合は以下になるそうです。

  • 男性49人、女性51人
  • 高齢者28人、15歳未満の子ども12人
  • 障害者8人
  • LGBT9人
  • 妊婦1人
  • 左利き10人
  • 外国人2人

「ベビーカーが必要な3歳未満の子は全体の2%。高齢者・障害者と合わせると38%。つまり、約4割もの人がもしかしたら移動に困難を感じていて、既存の環境やサービスに不自由を感じているかもしれません」

ユニバーサルマナーは高齢者や障害者へのマナーを指しますが、広義で言えば「自分とは違う誰かのことを思いやり、適切な理解のもと行動すること」。

「時代が変わった今、ユニバーサルマナーは一人の高齢者や障害者のためではなく、より多くの『皆のためへの配慮』を意味するのです」

ユニバーサルマナー検定とは

同協会は現在、ユニバーサルマナーを体系的に学ぶ検定を対面とオンラインの双方で定期開催しています。

同検定ウェブサイトによると、障害のある当事者がカリキュラムを監修しており、「本当に喜ばれる細やかな配慮を身につけられる」内容だといいます。

検定は3〜1級に分かれており、3級から内容がステップアップしていきます。

2級の受講は3級の取得が必要であり、1級の講座は誰でも受けられますが、認定のためには3級・2級の取得とレポートの提出が必要になります。

各クラスの概要は下の通りです。

3級

高齢者や障害者への基本的な向き合い方や声がけ方法を学ぶ講座。対面のほか、オンラインでも受講可能。受講者全員が認定証をもらえる

時間は2時間。受講料は5500円(税込)。

2級

車いすの操作方法や視覚障害者の誘導方法などを座学と体験を通して学ぶ、より実践的な講座。講座とは別に筆記試験があり、合格者のみ認定される

時間は休憩・試験も合わせて5時間。受講料は1万6500円(同)。

1級

オンラインでのカリキュラムとイベントを用意。カリキュラムは4つある。

  1. 聴覚障害者とのコミュニケーション方法を学ぶ「ユニバーサルコミュニケーション研修」
  2. 精神障害者や発達障害者を雇用したり、協働したりするために必要な知識や対応のポイントを学ぶ「ユニバーサルワーク研修」
  3. 認知症の人との向き合い方やコミュニケーション方法を学ぶ「認知症対応マナー研修」
  4. LGBTの人たちの悩みや配慮などについて学ぶ「LGBT対応マナー研修」

イベントは障害を抱える人たちとの座談会など。

認定されるためには、カリキュラムを3つ、イベントを1つ受講した後、レポートを提出。その内容で合否が判断される

時間と費用は1カリキュラム90分、5500円(同)。イベントの時間と参加費は内容により異なる。レポート3300円(同)。

開催地と開催頻度

対面講座は現在、東京都、大阪府、福岡県、北海道で定期的に開催されており、東京都と大阪府では月に数回、福岡県と北海道では数カ月に1回のペースで開かれているようです。

体験が重視される2級の講座はオンラインでは行われていないようですが、3級の場合、オンライン講座が月に数回開催されています。

詳しくは同検定ウェブサイトのこのページをご参考ください。

ユニバーサルマナー検定3級を受講した理由

ぼくがなぜ、ユニバーサルマナー検定を受講しようと思ったか。端的に言うと、自分を変えたかったからです。

町を歩いていると、ときどき、視覚障害者だと思われる白杖をつく人を見かけるのですが、そんなときに声をかけられないことがあるんですね。

どう声をかけようか。声をかけることでむしろ迷惑をかけないか

そんなことを考えているうち、徐々にその人との距離が離れてしまい、やがて自分の視界から消えてしまう…

声をかけることでポジティブな何かが生まれる可能性があるのであれば、とりあえず声をかけた方がいい。

そう頭ではわかっているものの、特にその人を見かけたときの距離が離れている場合、初動が遅くなります。声をかけられないまま終わることもあります。

そんな自分がかっこ悪いなと。

美意識を持ち込むのは違うのかもしれませんが、すぐに声をかけられない自分が「なんだかダサい」と思うのです。

その人の役に立つことが何かあるのであれば、すぐにパッと声をかければいいじゃん。何も必要なければそれはそれでいいわけだし、とこう思ってはいるのですが…。

ユニバーサルマナー検定を知った経緯

町中で見かける障害者に、すぐに声をかけられるようになりたい

ぼくがこう考えていたときに見つけたのが、毎日新聞の8月24日東京都版朝刊に掲載された記事でした。

冒頭にはこうあります。

「街で困っている障害者を見かけたが、どう接すればいいのかわからない――。そんなもどかしさを感じている人にオススメなのが『ユニバーサルマナー検定』だ。当初、年に約4000人だった受講者は昨年3万人まで増えた」

「まさにぼくにぴったりの講座なのではないか」。そう思い、早々にネットで詳細を調べて予約したのでした。

過去に下の記事にも書きましたが、毎日新聞は障害者や難病患者など何らかの生きづらさを抱えている人に関する記事が他紙よりも多い印象を受けるんですね。

新聞電子版「デジタル毎日」を1カ月使ってみた感想【他紙比較も】

それが、ぼくが中途で新聞社の採用試験を受けていたときに毎日新聞を第一志望にした理由の一つであり(最終面接で落ちたので他社に行きましたが)、現在、電子版を購読している理由の一つです。

ユニバーサルマナー検定3級の講座内容

ユニバーサルマナー検定認定証グループワークに使われた設問集(左)と3級の認定証

ぼくがユニバーサルマナー検定3級の講座を受講したのは先述の通り、10月17日。場所は東京都三鷹市の貸し会議室「Three Eight Nine MITAKA」です。

時間は午前10時から12時までで、内訳は講師による講義が75分、他の参加者とのグループワークが45分でした。

参加者は20人ほどで、ぼく以外は全員女性。20〜40代と思われる人が中心でした。

中には聴覚に障害があると思われる人も参加していました。会議室の前方には講師のほか2人の手話通訳者もいて、交互に講義内容を手話で表現していました。

講師の畠中梨絵さんは1987年生まれ。生後間もなく、骨が弱くて骨折しやすい「骨形成不全症」(国指定難病)と診断され、骨折や手術を何度も重ねて大人になったといいます。

畠中さんは子どものころから車いすを使っており、成長につれて難聴も進行。病気の影響で身長は93cmであり、大人になっても「子ども扱い」されることが多かったそうです。

講義では、そんな畠中さん自身が体験したことやそれに伴って感じたことも話されました。

講義(75分)の概要

  • ユニバーサルマナーとは何か
  • 同マナーの必要性が増した社会的背景
  • 「おしい!」障害者を見かけたときの日本人の対応の特徴
  • 高まるユニバーサルデザインの必要性
  • 身体障害の種類とその特徴(肢体不自由、聴覚・言語障害、視覚障害、内部障害)
  • 障害者や高齢者に向き合うときに大切なこと、コミュニケーションを図るときのポイント

グループワーク(45分)の概要

  • 隣席の2、3人と話し合う形
  • 人と人の「違い」を考えられる限り挙げよう
  • 配布資料に書かれた5つの設問について考えよう

設問の例:「少し開いたドア」と「10cmの段差」が別々の写真に写っている。2つの場所について、誰がどんなことに困るか。また、どうすればその不便を解消できるか。

講義とグループワークの終了後、3級のみの受講者は会議室後方に用意された自分の名前入りの認定証をもらって退室。

この日は2級の講義も合わせて開催されたため、セットで受ける人は休憩の後、再び会議室に戻って受講したようです。

日本人の障害者への接し方の特徴

畠中さんが話してくれたことの中で、特に印象に残ったことを2つ紹介しますね。

一つ目が、日本人の障害者への向き合い方の特徴。

畠中さんによれば、日本人のそれは「おしい」そうで、「無関心」か「過剰」かのどちらかに分かれがちだといいます。

見て見ぬふりをしたり、車いすをいきなり押してしまったり。

一方、畠中さんはこう話します。

「(見た目の)無関心や過剰な対応が悪いというわけではありません。それは、(障害者のことを)気にはしつつも声をかけられないという『遠慮』や、その人に何かをしてあげたいという『優しさ』の表れかもしれないからです」

そこで求められるのは、「さりげない配慮」だといいます。

車いすの人はこうだ、障害者はこうだ、高齢者はこうだと、人々は何となくのイメージに当てはめて行動しがちですが、その行為が必ずしもその人に求められるわけではありません。車いすユーザーも、障害者も、高齢者も、一人ひとり違う人間だからです

例えば畠中さんは、車いすで移動しながら1人で買い物をしているときに知り合いに会うと、必ずといっていいほどこう言われるといいます。

「え、一人で大丈夫?」

「私は体が小さいので仕方ないのかもしれませんが、それでも何度も言われるとあまりいい気持ちはしません。寂しくなってしまいます」

車いすの人であっても、乗り慣れている人はいますし、そもそも電動車いすの場合はレバーで操作ができるので押される必要はあまりないそう。

視覚障害者も同様に、自宅の周辺などよく通る道を歩いている場合、一人で移動するのに慣れていることもあるといいます。

障害者や高齢者であっても、実は皆が常にサポートを求めているわけではないんですね。ですから、こういった人たちに向き合うときに『何かしなければいけない』という義務感で接すると、場合によっては過剰な対応になってしまうかもしれません」

では、ぼくたちはどんなふうに声をかけるとよいのでしょうか。

障害者への声がけのポイント

  • 「大丈夫ですか」と聞かない
  • 「できますか」と聞かない
  • うれしい聞かれ方は「お手伝いできることはありますか」

なぜ、これらがポイントになるのか。畠中さんは解説します。

「まず、『大丈夫ですか?』と声をかけられると、私たちはつい『大丈夫です』と答えてしまいがちです。相手に心配をかけたくないためにそう反射的に言ってしまうことがあることは、健常者を含めて多くの人が想像しやすいのではないでしょうか。

また、『できるかできないか』で聞かれてしまうと、なぜか人は『できます』と答える傾向があるようです。これも『大丈夫ですか?』と聞かれたときと同じような理由ではないかと思います。

ですから、尋ねるのであれば、『私にお手伝いできることはありますか?』など、自分に引きつけて何かできることがあるかどうかを聞いてほしいんですね。

こんな問いかけであれば、こちらも『じゃあ、お願いします』と答えやすいのです」

そして、声をかけるか躊躇してしまったときに思い出してほしいフレーズがあると畠中さんは言います。

「それは、『迷わず素直にすぐ行動』です。ここで言う『行動』とは『聞く』の意味です。

なぜかと言うと、躊躇している様子やその人の不安感が、障害を抱える当事者に伝わってしまう場合があるからです。

例えばホームで電車を待っている障害者がいたとして、その人に対して『乗れるかな、大変そうだな、大丈夫かな』と思い続けていると、その気持ちが相手に伝わってしまうことがあります。

すぐに、先ほどお伝えした聞き方で尋ねてしまえば、サポートが必要かそうでないか、必要であればそれはどんなものかがわかるので、同じように見守っている周囲の人も安心感を覚えるでしょう。

迷ったときはまず聞くこと。これを胸に留めていただけると幸いです」

ユニバーサルマナー検定を受講した感想

既に書きましたが、障害を抱える当事者の生の声を聞けたこと。やはりこれが良かったですね。

今のところ、ぼくの友人や知人、一緒に仕事をする人の中には障害者がいないので、自分の疑問を聞きたくてもなかなかそんな機会がありません。

特に、どんなふうに声をかけられると当事者にとっていいのか、不快ではないのかといったことがぼくの大きな関心事だったので、それについてまとまった知識を得られたのはうれしかった。

想像すれば当たり前のことでしょう

この記事を読んだ人は、畠中さんが語ったことについてそう思うかもしれません。でも、そんな「当たり前なこと」も、いざ当人の口から聞かなければ気付かなかったりするものではないでしょうか。

確かに、「大丈夫ですか?」「できますか?」などとよく聞かれるのは相手からすればいい気持ちではないですよね。

聞く人が自分に引き付けて、「私はあなたに対して何かできることはありますか?」と聞く。

こちらの方が相手に心理的負担をかけない、シンプルで優しい声がけでしょう。

ぼくは過去、障害を抱える人に「大丈夫ですか」と声をかけたことがあったので、これからは状況に応じて内容を改めようと思います。

講座ではほかにも、各障害における困難の特徴や障害に関するマークの意味なども解説され、参考になることがたくさんありました。

今度は2級の講座を受けたいと思います。

各講座は同検定サイトから予約できます。