「病気の予防や治療について書くライターのこと?」「一体どんな人がそう名乗っているんだろう」
「医療ライター」。
いきなりそう言われてもその姿についてピンと来ない人が多いかもしれません。
医療ライターとはどんな人を指し、どんな仕事をする人を言うのでしょうか。
今回は、2016年の独立間もないころから「医療ライター」と称し、2023年8月までに666人の医療従事者(医師377人、歯科医師214人など)を取材してさまざまな媒体に記事を書いてきたショウブ(@freemediwriter)が、医療ライターの仕事内容について紹介します。
- 病気の解説だけじゃなくその役割は多様
- 取材ライターと在宅ライターがいる
- 医療従事者が優秀なライターとは限らない
- メディカルライターとの違い
概要は上の通りです。
それぞれ、詳しく解説していきますね。
目次
「医療ライター」は当事者がそう名乗っているだけ
まずお伝えしたいのは、そもそも「医療ライター」に厳密な定義はなく、本人がそう名乗っているだけということ。
何らかの資格保有者であれば、その資格を得るための一定の条件をクリアして、特定の機関に認められることでその資格が与えられます。
医師や看護師も資格を与えられた時点で自分をそう称するわけですが、「医療ライター」には資格が要りません。
わたしを含めて各ライターが「自分は医療ライターなのだろう」「そう名乗りたい」「そう名乗っておこう」と考えて言っているわけですね。
これは医療ライターに限らず、ほかの専門ライターであっても、「ジャーナリスト」と名乗っている人であっても同様です。
書く記事は病気だけではない
その上で、医療ライターと称する人たちが書く記事のテーマは本当にさまざまです。
冒頭に書いた通り、一般の人からすれば「医療」=「病気に関わること」というイメージから、「病気の予防や治療の方法について書く人」と印象付けてしまうことがあるかもしれません。
しかし実際は違っていて、「医療ライター」と名乗る他の人たちのケースを見ても、書くテーマは病気に限らないことが多いようです。
広く医療業界に関わる記事を書いている人
医療ライター個々によって特徴は違いますが、広義としてはこう捉えた方が実情に合っているとわたしは考えます。
「医療」と一口に言っても、それが関わる領域は広いのですね。
医療は多職種から成り立っています。
医師、看護師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、管理栄養士、臨床工学技士、医療事務…。
製薬会社や医療機器メーカーなども医療に不可欠な存在です。
読者層によって記事は変わる
ここでポイントなのが媒体の読者層です。
読者が一般の人であれば病気の予防や治療について関心を持つ人が多いので、自然と記事のテーマも絞られてきます。
一方、読者層が上に挙げたような医療関係者であればどうでしょうか。
病気のこと以外にも興味は広がってくるだろうと想像できます。
そもそもどうすればその仕事に就けるのか、転職できるのか、仕事に就いた先でのキャリアアップはどうやればいいか、人材のマネジメントはどうすればいいか、どうやって医療機関を運営していくのが今の時代に合っているか――。
先端的な薬や医療機器、デジタルデバイスについて知りたい人もいるでしょう。
医療を問わず、「業界の中にいる人」と「外にいる人」とでは知りたい情報が違ってくるので、その媒体の読者層に合わせて、企画も変わってきます。
それを踏まえると、医療をテーマにした記事の内容は下の通りさまざまだとわかるのではないでしょうか。
- 病気の予防や治療の方法
- 各種症例や患者の声
- ユニークな病院やクリニック、医師の紹介
- 薬や医療機器、医療サービスの紹介
- 医療制度の解説
- 経営術やマネジメント論
- 就職、転職、キャリアアップの方法
特に医療は専門誌や広報誌が多い業界で、病気以外のことをテーマにした媒体が多く存在します。
その分、仕事を選ばなければ医療ライターが担当する記事は多様になります。
医療ライターが記事を書く媒体
そんな中で、医療ライターと称する人がどんな媒体に記事を書いているのか。可能性としては下のものが挙げられます。
- 一般市民が読者の雑誌やウェブメディア
- 医療者が読者の専門誌やウェブメディア
- 医療機関のホームページ
- 医療機関が発行する広報誌
- 医療関連企業が運営するオウンドメディア
- 医療関連企業が発行する冊子
- 医療をテーマにした書籍
わたしが過去に記事を書いた媒体も上のいずれかに該当します。
詳しくは下の記事で紹介しています。
取材ライターと在宅ライター
医療ライターが書く記事は広く医療に関わること
このことを知っていただいた後に、記事を世に出すまでの過程がライターによって違うこともお伝えします。
ひと昔前まで、「ライター」といえば「人や事象を取材して記事を書く人」を意味していましたが、インターネットと検索エンジンの発達に加え、仕事を依頼したい企業と仕事を請け負いたい人を仲介する「クラウドソーシングサービス」が普及したことで、ライターのあり様は変わりました。
本や雑誌、ウェブの情報を頼りに記事をリライトする、いわゆる「在宅ライター」が激増し、数でいえばライター全体の大半を占めるようになったのです。
詳しくは下の記事に書きました。
【最新版】ライターとは?多様化した姿と仕事内容を13年選手が解説
「医療ライター」と名乗る人でもそれは例外ではありません。
医療に関するウェブの記事で、「監修者」として医師の名が挙げられているものを目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。
このような記事は社内外のライターが取材をせずにウェブ情報などをリライトし、それを専門家に見せ、チェックしてもらってから世に出しているものだと推察されます。
記事の信頼性の順位
- 取材した上で専門家に確認してもらっている
- 取材しないで専門家に確認してもらっている
- 取材しないで専門家のチェックもない
記事のテーマや関わる人によっても違うので全てのケースにおいてこうだとは言えませんが、病気が関わる記事(臨床系記事)の場合、信頼性の高い傾向としては上の順だとわたしは考えます。
専門家に取材をし、記事が掲載される前に専門家のファクトチェックが入っている
医療に関して言えば、これが最も信頼性が高くなりやすいとわたしは考えているので、
- 取材しない案件は引き受けない
- 臨床系記事は必ず専門家に確認してもらう
ことを心がけています。
医療従事者でも優秀なライターとは限らない
パラレルワーク化が進んでいることもあって、看護師などの医療従事者が「医療ライター」として活動しているケースが増えてきました。
医療従事者が書いているなら安心だ。素人よりはいいだろう
そう思う人もいるのではないかと思いますが、それは「半分正解で半分はずれ」だとわたしは考えています。
- 自分の専門外であればやはり取材が必要
- 取材で情報を引き出せるかは人による
- 読みやすい・理解しやすい文章を書けるかは人による
「半分正解」としたのは、その人が専門にする分野の記事であれば、そうではない人よりも質の高い記事を書ける可能性が高いだろうと考えられるから。
とはいえ、その人個人の知識や考えにはある種の偏りがある可能性があるため、主観で成り立つコラム以外であればやはり相応の調査や取材は必要だと思います。
一方で、「半分はずれ」としたのは上の3点からで、医療従事者といえども自分の専門外のことであれば調査・取材をしないと良質な記事を書くことは難しく、また取材をして情報を引き出せるか、読者が理解しやすい・読みやすい記事を書けるかはわからないためです。
医療者を日頃から取材している記者やライター、編集者であればうなずく人も多いのではないかと思いますが、専門家といっても知っていることは限られます。
そして、良い医療者ほどそのことに自覚的で、「それは自分の専門外だからよくわからない」と正直に言ってくれます。
それに、たとえ専門的な知識があったとしても、それを読者に伝わりやすいようアウトプットできるかはわかりません。
わたしは医師と日常的に原稿のやり取りをしていますが、率直に言うと、読みやすい文章を書ける医師は少ないです。
医師は文章を書く仕事をしてきた人ではありませんから、これも想像しやすいのではないでしょうか。
医療ライターとメディカルライターの違い
最後に、「医療ライター」と「メディカルライター」の違いをお伝えします。
医療に関わるライターの呼称としては、「医療ライター」と「メディカルライター」の2つがありますが、関係者からすれば「これらは似て非なるもの」。
医療ライターは先述の通り、広く医療に関わる記事をメディアなどの媒体に書くライターを意味しますが、メディカルライターは医薬品の製造・販売に関する資料を作成する人を意味します。
「資料」というのは例えば、医薬品の説明文や症例・治験結果の報告書、医薬論文などです。
医療ライティングの中でも専門的な知識が必須の分野なので、薬剤師などの医療者が担うことが多いようです。
わたしが過去に仕事をした医療系広告代理店の経営者も「薬剤師がメディカルライターとして勤めている」と話していました。
まとめ
- 医療ライターが書く記事は意外と多様
- 取材ライターと在宅ライターがいる
- 医療従事者だからといって優秀なライターとは限らない
- 医療ライターとメディカルライターは違う
わたしが考える医療ライターの実態について書きました。
医療ライターが書く媒体やテーマはさまざまですが、わたしの場合、「巡り巡って一般の多くの人の役に立つ可能性がある」と思って取材をし、記事を書いています。
たとえ医療者向けの媒体であっても、医療者に何らかのポジティブな影響を与えることができれば、それがひいては医療業界のためになり、そして長期的には患者や家族のためになる可能性があると思うのです。
自分一人でできることは限られますが、「見えないところ、わからないところで大きなものにつながっているかもしれない」と想像しながら、今後も医療に関する記事を書いていこうと思います。
医療ライターとしての講演用原稿
過去にパートナー企業の医療ウェブメディア「m3.com」の編集者から相談を受け、同社と一緒に仕事をしているライターの方々に向け、講演させてもらいました。
「ネタ取りの方法」「取材時の心がけ」「読まれる記事にするための工夫」をお話ししたのですが、そのときのスピーチ用原稿を記事としてアップしたので興味があればご参考ください。
わたしが行っているネタ取りの方法について詳しく書いた記事も載せました(具体的なノウハウに触れているので途中から有料にしています)。
【企画が尽きない】医療ライターが実践する面白いネタ・人の探し方
また、この記事を読んでわたしへのお問い合わせなどを検討してくれている方向けに、再度、実績を紹介する記事も添付しますね。
この記事の中に、お問い合わせ時に教えていただきたいことも書いているのでご参考ください。
医療ライターの庄部でした。
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