予防と治療

【基礎からわかる】全身の健康にも影響する歯周病の予防・治療方法

口元を気にする女性

「口の中をきれいにすることが大切」「お口の健康は全身の健康に影響する」

ぼくが医療を取材しているからかもしれないんですが、こういった情報をよく目にするようになりました。

その中でも、特に言われるようになったと感じるのが、歯周病の怖さとこの病気を予防・治療することの大切さ。

歯周病は日本人が歯を失う原因の第一位であるだけではなく、心筋梗塞や脳梗塞など命に危険が及ぶ病気の発症リスクも高めると指摘され始めたのです。

そもそも、歯周病とはどんな病気なのでしょう。早期発見や治療の方法は?

関心が高まる今、その基礎から紹介したいと思います。

わかりにくい名称の意味

  • 「歯周病」…歯の周りに炎症が起こる病気の総称
  • 「歯肉炎」…炎症が歯肉に留まっている状態
  • 「歯周炎」…炎症が骨に及んでいる状態
  • 「歯槽膿漏」…歯周炎と同じ意味。

歯周病関連の表現はなんだかわかりにくい。

ぼくは歯科医師を取材するようになる前、こう思っていました。

「歯周病」だけであればいいんですが、「歯肉炎」「歯周炎」「歯槽膿漏(しそうのうろう)」という表記も目にする。

それぞれどんな違いがあるのか? それとも、意味が同じものも含まれているのか?

歯科医師を取材する中で、解決しました。

まず「歯周病」。これはその名の通り、歯の周りの組織(歯周組織)に炎症が起こっている病気の総称です。

この病気を進行度合いによって分類したものが、「歯肉炎」と「歯周炎」なんですね。

歯肉というのは、ぼくたちが日常的に使う言葉でいうと、「歯茎」のこと。歯肉炎は細菌に感染することによって起こった炎症が歯肉に留まっている状態を指します。

この歯肉炎が進行して、歯を支えている骨(歯槽骨・しそうこつ)にまで炎症が及んだ状態を歯周炎と呼びます。

そして、歯槽膿漏ですが、これは歯周炎と同じ意味であるそう。

今でもテレビCMで使われている表現なので、人によっては歯周病よりもなじみが深いかもしれませんね。

ただ、取材した歯科医師によると、歯槽膿漏という表現はひと昔前のもので、学術的にはもう使われていないといいます。

歯周病を説明するイラスト社会福祉法人恩賜財団済生会のホームページより引用

歯周病が起こる仕組み

歯周病はどうやって起こるのでしょうか。

歯周病の診断と治療を専門にする歯科医師たちを取材することで知ったメカニズムは下の通り。

① 十分に口の中のケアが行われていない

② 口の中の細菌が食べかすなどを栄養源にして増える

③ 細菌が白いネバネバした物質(歯垢、プラーク)を作り出す。歯垢は細菌のすみかになる

④ 歯垢が歯の表面で増え、やがて歯と歯茎の間(歯周ポケット)にまで広がる

歯周ポケットは、Pg菌などの歯周病の原因菌が好む酸素の少ない環境である一方、人にとっては掃除が難しい部位であるため、放置するとさらに歯垢が増殖し、炎症を引き起こすそうです。

そして、炎症が進むと歯槽骨まで溶けてしまい、放置したままだとやがて歯を抜かないといけなくなってしまうといいます。

歯周病により全身疾患リスクがどれほど上がるか

心筋梗塞 2倍
脳梗塞 2.8倍

糖尿病、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎のリスクも増

こんな最悪のケースが想定される一方で、取材する歯科医師が口々に話すのが、「歯周病の影響は口の中に留まらない」こと。

炎症によって破壊された歯肉から細菌が血液に入り込むことで、様々な病気の発症リスクを高めたり、病気の悪化を招いたりするそうなんです。

まず挙げられるのが、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞。

歯周病の原因菌が、動脈硬化(動脈の弾力が失われて硬くなる状態)を促すことでこれらの病気にかかりやすくなると考えられていて、東京大学の研究や日本臨床歯周病学会によると、歯周病の患者はそうでない人よりも心筋梗塞が起きる可能性が2倍に、脳梗塞の発症リスクが2・8倍に増えるといいいます。

また、歯周病菌が持つ毒素などによって、血糖値を下げるホルモン(インスリン)への抵抗力が高まり、糖尿病が発症・悪化しやすくなるともいわれています。

さらに、歯周病にかかっている女性が妊娠すると、早産により低体重の子どもが生まれる可能性が高いとも指摘されています。

歯周病の原因菌が血中に乗って子宮の中の組織や胎児に感染したり、歯周病の炎症によって生み出されたサイトカインと呼ばれるタンパク質が子宮を刺激したりすることで、早産を促してしまうと考えられているといいます。

これらに加えて、歯周病の原因菌は誤嚥性肺炎の要因の1つだともいわれています。

歯周病の予防法はセルフケア+歯科でのメンテ

こんな風に、全身にも様々な影響を与え得ると考えられている歯周病ですが、では、どうすれば予防と早期発見が可能になるのでしょうか。

「丁寧な歯磨きを基本に、フロスや歯間ブラシも活用しながら口の中の細菌を増やさないようにしていくことが最も重要」

取材した歯科医師たちは口々にこう話します。

その一方で、「セルフケアだけで歯垢を十分に落とすのは、私たち歯科医師でも難しい」と続けます。

歯垢は歯磨きでも落ちますが、歯垢と唾液、歯周ポケット内の体液が合わさって、「歯石」と呼ばれる硬い状態になってしまうと、歯磨きでは取り除くことができず、歯科医院で専用の器具を使って施術を行わないと落とせないそうなんですね。

ですから、「セルフケアに加えて定期的に歯科医院で専門的なケアを行うことが大切」と歯科医師たちは口を揃えます。

歯周病は無症状が特徴、診断方法は?

歯周病の大まかな目安

レントゲンで骨の溶け具合も確認した上で

  • 歯周ポケットが4㎜以上→歯周炎
  • 歯周ポケットが6㎜以上→歯周炎の重度

歯周病はどうやって診断されるのでしょうか。

この病気は自覚症状がないまま進行してしまうことが特徴で、「歯茎が腫れる」「歯がぐらつく」といった症状が出た場合には、歯槽骨が溶ける歯周炎の状態になっている可能性が高いといいます。

歯周病の診断は歯周ポケットの深さを測ったり、レントゲン撮影を行って骨の溶け具合を調べたりすることでなされますが、目安としては、歯周ポケットが4㎜以上であれば歯周炎に、6㎜以上であればその重度になっている可能性が高いそう。

歯周ポケットが5㎜までの中等度であれば、セルフケアの向上と歯科医院でのケアによって状態の悪化を防ぐことができますが、重度に移行してしまうと進行を抑えること自体が難しくなってしまうといいます。

早めに見つけて対策を打つことが大切、というわけですね。

歯周病を専門にする歯科医師は「健康な人は半年に1度、歯周炎に移行している人は3、4月に1度のペースで検診を受けましょう」と話していました。

歯周病の治療方法

歯の治療風景

歯周病の治療は先に述べたように、自分の口の状態に合ったセルフケアを継続しながら歯科医院で定期的に歯垢や歯石を取り除いてもらうことが基本です。

その一方、重度に移行してしまった場合には、歯肉を切り開いて感染した歯肉や歯石を直接取り除く方法(フラップ手術)や、溶けてしまった骨を人工的に増やす方法(再生療法)も手立てとしてはあります。

しかしながら、「治療法があるから重度になってしまっても大丈夫ではない」そう。

「フラップ手術によって歯肉を開いて閉じると、歯茎が下がって歯の根が露出し、虫歯になりやすくなってしまうケースがあります。

また、再生療法を効果的に行うにはある程度の骨が残っている必要があり、重度になってしまうと適応症例が非常に少なくなってしまうのです」(取材した歯周病専門の歯科医師)

そもそも重度に移行してしまうと進行抑制が難しくなってしまうといいますから、やはり早期の対策が重要であることに変わりはありません。

信頼できる歯科医院を見つけ、日頃から歯科医師や歯科衛生士に気になることを相談できる関係を築いていくことが大切。

  • よく話を聞いてくれる
  • 丁寧に説明してくれる
  • 患者の生活や気持ちにも配慮して選択肢を提示してくれる

2019年6月現在で210人の歯科医師を取材したぼくであれば、上の3つを歯科医院選びのポイントに挙げたいと思います。

「当たり前のことじゃん」って思われるかもしれませんが、でも、想像してみてください。

今までに受診した歯科医院はこれらの条件を満たしているところばかりだったでしょうか。

歯科医師の人柄はもちろんですが、保険診療がベースの歯科医院だと人数を診ることも経営的には求められるので、歯科衛生士との役割分担がしっかりできているとか、医療事務がカウンセリングの役割を担っているとか、何らかの工夫を取り入れないと患者とコミュニケーションを密に取って診療を進めていくのって簡単ではないと思うんです。

だから、シンプルだけど大切なこととして挙げました。

歯科医師とのやり取りは人対人ですからどうしても相性はありますし、「何か嫌だな…」と思う人に自分の口の中を見せたくないという人もぼくだけではないはず。

歯科医師を頻繁に替えるのは自分の口の変化を長期的に把握する人がいなくなるので良くないと思いますが、歯科医師の発言や治療効果に疑問を持った場合は別の人に相談してセカンドオピニオンを求めてみることを勧めます。

歯周病に限れば、日本歯周病学会が定める専門医の資格を持つ歯科医師を探すのも手。下記ホームページから検索できます

日本歯周病学会