予防と治療

無気力やいらいら、だるい…それ男の更年期障害かも【有効な治療法】

ソファでぐったりする男性会社員

驚きました。

医療を取材するようになってから初めて知ったんですが、男にも更年期障害があるらしいんです。

ぼくはてっきり、「更年期障害」というと女性特有のものだと思っていたんですが、そうではないらしいんですね。

男性ホルモンが減ることによって起こり得る病気だそうで、症状は多岐にわたるといいます。

「いつも楽しめていたはずなのに、何でだろう。趣味が楽しめない」「なんだか仕事のやる気が起きない」「最近よくいらいらする」「眠れなくなった…」

こんな症状があれば、原因はもしかしたらこの病気かもしれません。

今回は、男性の更年期障害の概要と原因、診断方法、治療方法について解説します。参考にしてみてください。

LOH症候群が知られるようになった経緯

男性の更年期障害の正式な病名は「LOH症候群」(加齢性腺機能低下症)といいます。

一般の方にはまだあまり知られていない病気だと思いますが、専門外来で診療を行う医師によると、日本の医師に知れ渡ったのもここ10年の間だそう。

1980年ごろから欧米で注目されるようになり、2010年に国際的に最も信頼されているとされる医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に症状や診断・治療方法が掲載されたことで日本の医療関係者にも広く知られるようになったといいます。

国内ではその後、日本泌尿器科学会と日本Men’sHealth医学会によって診療ガイドラインが策定され、現在はガイドラインに沿った診療が行われているそうです。

LOH症候群の原因

LOH症候群の原因は「男性ホルモンの減少にある」と取材した医師はいいます。

男性の精巣では、生殖器官の発育やひげの成長、筋肉の維持といった、いわゆる“男らしさ”を促す物質が作られています。

これは、「テストステロン」と呼ばれる男性ホルモンで、テストステロンの分泌量は思春期までは増えますが、それ以降は緩やかに減っていきます。

つまり、テストステロンの減少は男性全員に共通した加齢に伴う現象なのですが、この物質の減少に伴って、心と体、性機能においてさまざまな症状が起こるのがLOH症候群だというのです。

テストステロンは加齢だけではなく、ストレスや睡眠不足、うつ状態、肥満、糖尿病などによっても減ってしまうことがわかっているといいます。

起こり得る症状

疲れて机に伏せる男性
起こり得る症状は精神的なものと身体的なものがあります。

精神的な症状

  • うつ状態や不安感の増大
  • 意欲、集中力、記憶力の低下
  • 不眠
  • いらいら
  • 性欲減退など

身体的な症状

  • 体のだるさ
  • 勃起不全
  • 筋肉や関節の痛み
  • 筋力・骨密度の低下
  • ほてりや多汗
  • 頭痛、めまい、耳鳴り
  • 頻尿など

個人差の大きい発症年齢

女性の更年期障害に比べて、発症年齢の個人差が大きいことも特徴だといいます。

取材した医師によれば、女性の更年期障害が50歳ごろを中心とする閉経の前後10年間に起こるのに対し、男性の場合は30代で発症することもあるそう。

女性と同様に中心となるのは40代から60代ですが、若くして病気になる可能性があるということなんですね。

若くして起こる可能性があり、精神的な症状を伴うことがある。

なんだか、精神疾患と似ていませんか?

そう医師に聞いたところ、うつ病などと診断されて既に治療を受けている人がセカンドオピニオンを目的に相談に訪れることもあるとのこと。

その中には、LOH症候群の治療を受けることで症状が和らいだ人もいるといいます。

LOH症候群の診断方法

では、具体的にどうやって診断し、どんな治療を行うのでしょうか。

診断は問診と血液検査によってなされます。

まずは医師が問診で具体的な症状などを聞き取り、合わせて「AMS」と呼ばれる専用の質問票でその程度を把握します。

さらに、血液検査によってテストステロンの量を測定、ガイドラインにおける治療介入の基準値と比べて治療方法が検討されます。

基準値は20代の平均値の70%(11・8pg/ml、pg=ピコグラムはmgの10臆分の1)で、この数値よりも低いと何らかの治療方法が検討されるそう。

治療方法

薬と注射器
治療方法は3つあります。

治療方法

  • 注射または塗り薬でテストステロンを補う方法
  • テストステロンを自力で増やすことを目的とした生活指導
  • 漢方薬などの薬物療法

医師によると、この中で最も効果が見込めるのはテストステロンを補う方法ですが、注意も必要だといいます。

長期間にわたってテストステロンを体に取り入れ続けると、「自分でホルモンをつくらなくていい」と体が判断してしまい、精巣でテストステロンをつくる能力が低下、さらに精子をつくる機能も落ちてしまうというのです。

ですから、将来的に子どもをつくる希望がある男性が患者の場合は、テストステロンを補う治療を行わず、生活習慣の改善と漢方薬を含めた他の薬物療法が検討されます。

医師が勧める生活習慣

医師に聞いた、テストステロンの分泌量を自力で増やすためのポイントも伝えておきますね。運動、食事、睡眠に着目します。

運動

  • スクワットを1日40回

運動について、医師はスクワットを勧めていました。

男性ホルモンは精巣だけではなく筋肉でも作られていて、体の中で最も大きな筋肉がある太ももを鍛えるのが効率的だからです。

目安は1日40回。時間を空けて10回ずつ行う形だと取り組みやすいでしょう。

食事

  • 赤身の肉やニンニク、ニラでテストステロン増
  • アルコールはテストステロン減

食事については、赤身の肉やニンニク、ニラを食べることでテストステロンが増加するという報告があるといいます。

その一方で、アルコールはテストステロンを減らしてしまうそうなので飲酒はほどほどに。

睡眠

  • 健康長寿に良い7時間を目安に

上に挙げたものが代表例ですが、中でも「特に意識してほしい」と医師が話していたのが、自分が楽しいと思うことをすること

ストレスがかかり続けている状況がテストステロンの分泌量を減らしてしまうので、1日に少しでも趣味の時間を持つなどして、楽しむ感覚を習慣的に味わうことを勧めていました。

スタンダードな治療方針

こんな風に生活習慣を変えることも一つの方法ですが、そもそもLOH症候群の患者は意欲の低下や疲れやすいといった症状によって、治療を始めた当初は自力で生活習慣を見直せないことも多いそう。

取材した医師が在籍している男性専門クリニックではまず、注射でテストステロンを補う治療を月に1回、計3回行って症状の軽減をめざします。

その後、生活習慣の改善にも取り組みつつ、症状の改善度合いに応じて塗り薬に切り替え、テストステロンの投与量を減らしていくといいます。

治療効果が低いことも

注意したいのは、男性ホルモンの値がガイドラインの基準値を下回っていて、該当する症状もあるからといって、治療が必ずしも有効とは限らないことです。

男性ホルモンが減ることで様々な症状が起こり得ることはわかっていますが、長期にわたる男性ホルモンの分泌量の推移と症状の因果関係を詳しく調べた研究はなく、ガイドラインの基準はあくまでも目安に過ぎないそうなんですね。

なので、実際のところ治療を行ってみないと、症状の原因に男性ホルモンの減少が関わっていたかどうかはわからないとのこと。

男性ホルモンが関わっている度合いが高いほど治療効果は高くなりますが、低いほど効果も低くなってしまうわけです。

「男性ホルモンが具体的にどれくらい減ると症状が起きるのかという明確なエビデンスはまだないので、治療効果は保証できるものではありません」と医師は話していました。

副作用と費用

男性ホルモン投与による副作用としては、赤血球が異常に増える多血症や肝機能障害、排尿障害が起こる可能性があるといいます。

これらの症状が見られた際、治療を中断する場合もあるそう。

また、LOH症候群の治療は健康保険が適用されない自費になるため、費用は医療機関によって異なります。

ぼくが取材した医師が在籍するクリニックでは、初診時の検査が約3万円、以降の診察と治療代が月に1万円ほどとのことでした。

けっこうかかりますね…。

ただ、更年期障害は女性特有のものではなく、男性にも起こり得るもので、男性ホルモンを投与することで症状が和らぐ可能性があることは知っておいて損はないはず。

LOH症候群の治療を行っている全国の医療機関は、「日本Men’sHealth医学会」のホームページに掲載されているので、興味のある人は参考にしてみてください。